胆嚢管 Ductus cysticus

胆嚢管は直径が約3mmの細い管で、通常は弓状に走行します。長さは個人差がありますが、一般的に3-4cmです。解剖学的位置としては、胆嚢頸部から連続して肝十二指腸間膜内を走り、総肝管と合流して総胆管を形成します (Gray and Standring, 2021)。

構造的特徴

胆嚢管の内腔には特徴的なハイステルのラセン襞(spiral valves of Heister)が存在します。これは粘膜が螺旋状に突出した構造で、特に胆嚢に近い部分で顕著です (Ando, 2018)。このラセン襞は管内圧の変化に対して胆嚢管の過度な拡張や虚脱を防ぐ調節機能を持ち、胆汁の流れを制御する重要な役割を担っています。一方、総胆管に近い部分では内面は比較的平坦になっています (Nagral, 2005)。

組織学

組織学的には、胆嚢管は基本的に胆嚢と同様の層構造を持ち、粘膜層、粘膜下層、筋層、外膜から構成されています (Ross and Pawlina, 2020)。粘膜は単層円柱上皮で覆われており、ラセン襞部分では上皮下に豊富な結合組織が存在します。

臨床的意義

臨床的意義としては、胆嚢管は胆石症において重要な部位です。胆石が胆嚢管に嵌頓すると急性胆嚢炎を引き起こす可能性があります (Strasberg, 2008)。また、胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術など)においては、胆嚢管の正確な同定と適切な処理が合併症予防のために極めて重要です。胆嚢管の解剖学的バリエーションも多く、外科手術の際には注意が必要です。胆嚢管は時に短く、あるいは総肝管に対して異常な角度で合流することがあり、これが胆道損傷のリスク因子となります (Suzuki et al., 2014)。

参考文献

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J0710 (腹膜の折り返し部分と肝臓:下後方からの図)

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J0711 (胆嚢と胆道:切断面)

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J0713 (肝臓と膵臓の排出路:正面からの図)