


胆嚢管は胆嚢頸部から連続する管状構造で、直径約3mm、長さ3-4cmの細い管です(Skandalakis et al., 2004)。通常は弓状に走行し、肝十二指腸間膜内を下降して総肝管と合流し、総胆管を形成します(Gray and Standring, 2021)。合流部位は一般的に十二指腸上縁の約3-4cm上方に位置しますが、個体差が大きく、解剖学的変異が多い部位として知られています(Turner and Fulcher, 2001)。
胆嚢管の内腔には特徴的なハイステルのラセン襞(spiral valves of Heister)が存在します。これは粘膜が螺旋状に5-12回突出した構造で、特に胆嚢に近い近位部で顕著です(Nagral, 2005)。このラセン襞は真の弁ではなく、管内圧の変化に対して胆嚢管の過度な拡張や虚脱を防ぐ調節機能を持ち、胆汁の双方向の流れを制御する重要な役割を担っています(Moosman, 1970)。一方、総胆管に近い遠位部では内面は比較的平坦になり、ラセン襞は消失します(Ando, 2018)。
胆嚢管は通常、総肝管の右側から合流しますが、約20%の症例で左側または後面から合流する変異が見られます(Champetier et al., 1991)。また、胆嚢管が総肝管と平行に長く走行する平行走行型や、総肝管に低位で合流する低位合流型などの変異も報告されており、これらは腹腔鏡下胆嚢摘出術における胆管損傷のリスク因子となります(Suzuki et al., 2000)。
組織学的には、胆嚢管は胆嚢と類似した層構造を持ち、内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、外膜の4層から構成されています(Ross and Pawlina, 2020)。粘膜は単層円柱上皮で覆われており、微絨毛を持つ吸収細胞と粘液分泌細胞が混在しています(Kidd and Smith, 1999)。ラセン襞部分では上皮下の固有層に豊富な結合組織と弾性線維が存在し、血管網も発達しています(Johnson and Anson, 1952)。
筋層は平滑筋線維束から構成され、胆嚢頸部との境界部には括約筋様の肥厚(Lütkens括約筋)が存在することがあります(Lütkens, 1965)。この構造は胆汁の逆流防止に関与していると考えられています。外膜は疎性結合組織から成り、胆嚢動脈の分枝である胆嚢管動脈が走行します(Champetier et al., 1991)。
胆嚢管への血液供給は主に胆嚢動脈から分岐する胆嚢管動脈によって行われます(Balija et al., 1999)。胆嚢動脈は通常、右肝動脈から分岐し、Calot三角(胆嚢管、総肝管、肝臓下面で囲まれる三角形の空間)内を走行します(Hugh et al., 1992)。しかし、この血管走行にも多くの変異があり、左肝動脈起始や二重動脈などが報告されています(Suzuki et al., 2000)。
神経支配は肝臓神経叢を介して交感神経系と副交感神経系の両方から受けており、これらは胆嚢管の運動機能と感覚機能を制御しています(Mawe, 1998)。
胆嚢管の主要な機能は、胆嚢と総胆管の間で胆汁を輸送することです(Rasmussen et al., 1997)。食事摂取により消化管ホルモンであるコレシストキニン(CCK)が分泌されると、胆嚢が収縮し、貯蔵されていた濃縮胆汁が胆嚢管を通って総胆管へと排出されます(Shaffer, 2006)。ハイステルのラセン襞は、この過程で管内圧を調節し、適切な流量を維持する役割を果たしています(Nagral, 2005)。
空腹時には、Oddi括約筋の収縮により十二指腸への胆汁流出が制限され、胆汁は胆嚢管を逆流して胆嚢内に貯蔵されます(Mawe, 1998)。
胆嚢管は胆石症において重要な部位です。胆石が胆嚢管に嵌頓すると急性胆嚢炎を引き起こす可能性があり、これは外科的緊急事態となることがあります(Strasberg, 2008)。胆嚢管結石は約5-15%の胆石症患者に見られ、激しい疝痛と黄疸を伴うことがあります(Gurusamy and Davidson, 2014)。また、胆嚢管の慢性的な炎症は線維化と狭窄を引き起こし、Mirizzi症候群の原因となることがあります(Csendes et al., 2007)。
腹腔鏡下胆嚢摘出術においては、胆嚢管の正確な同定と適切な処理が合併症予防のために極めて重要です(Strasberg and Brunt, 2010)。胆嚢管の解剖学的バリエーションは外科手術時の主要なリスク因子であり、特に短い胆嚢管、総肝管との平行走行、低位合流などは胆管損傷のリスクを高めます(Hugh et al., 1992)。現在では、「critical view of safety」と呼ばれる標準化された解剖学的確認法が推奨されており、これにより胆管損傷の発生率が大幅に減少しています(Strasberg and Brunt, 2010)。
画像診断においては、超音波検査、CT、MRI/MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)が胆嚢管の評価に用いられます(Baron et al., 1994)。特にMRCPは非侵襲的でありながら胆嚢管の走行と解剖学的変異を詳細に描出できるため、術前評価として有用です(Reinhold and Bret, 1996)。