方形葉(肝臓の)Lobus quadratus hepatis

J710.png

J0710 (腹膜の折り返し部分と肝臓:下後方からの図)

J723.png

J0723 (肝臓を引き上げたときの網嚢への入口)

解剖学的特徴

肝臓の方形葉(Lobus quadratus hepatis)は、胆嚢窩、肝円索(臍静脈索、ligamentum teres hepatis)、肝門の間に位置する肝葉です(Standring, 2020; Couinaud, 1957)。解剖学的には肝臓の臓側面の前縁にあり、形態学的には右葉に属しますが、機能的には肝臓の内側区域(Couinaud分類のセグメントIV)に属します(Bismuth, 1982; Strasberg, 2000)。方形葉は、肝臓の腹側・右側に位置し、形状が四角形に近いことから「方形葉(quadrate lobe)」と名付けられています(Gray and Carter, 2019)。その境界は前方を胆嚢窩、後方を肝門、左方を肝円索裂、右方を右葉本体により規定されます(Healey and Schroy, 1953)。

機能と血液供給

機能的には肝臓の他の部位と同様に、タンパク質合成、糖代謝、脂質代謝、解毒作用、胆汁生成などの代謝機能を担っています(Netter, 2018; Tortora and Derrickson, 2017)。方形葉は第IV肝区域(Couinaud分類)の一部を構成し、主に門脈左枝および左肝動脈から血液供給を受けますが、一部は門脈右枝からも血液供給を受けることがあります(Bismuth, 2013; Abdel-Misih and Bloomston, 2010)。静脈還流は中肝静脈を介して行われます(Makuuchi et al., 1985)。胆汁排泄は左肝管系を介して行われ、臨床的には左葉系に分類されます(Blumgart, 2007)。

臨床的意義

臨床的には、肝臓の生検や手術の際の重要な解剖学的ランドマークとなります(Strasberg, 2021; Jarnagin, 2012)。肝臓腫瘍や転移がこの領域に生じた場合、近接する胆嚢や肝門部の胆管・門脈・肝動脈へ影響を及ぼす可能性があり、外科的切除の際には特に注意が必要です(Fong et al., 1999)。また、肝臓手術において方形葉の解剖学的特徴と機能的区分を理解することは、適切な肝切除範囲の決定(特にセグメント切除やセクション切除)や合併症予防に重要です(Couinaud, 2017; Terminology Committee, 2000)。画像診断では超音波検査、造影CT、MRIなどで同定可能であり、肝臓疾患の診断・評価において重要な参照点となります(Skandalakis et al., 2022; Kamel et al., 2002)。特に肝細胞癌や転移性肝腫瘍の術前評価において、方形葉の血管解剖と胆管解剖の把握は不可欠です(Makuuchi and Kokudo, 2013)。

参考文献