間膜ヒモ Taenia mesocolica

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J0700 (回盲部:盲腸は拡張、後方からの図)

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J0701 (回盲部:盲腸は収縮)

解剖学的特徴

間膜ヒモ(taenia mesocolica)は、大腸壁に存在する3本の縦走筋帯(taeniae coli)の一つであり、横行結腸間膜が横行結腸の後壁に付着する部位に沿って走行しています(Standring, 2020)。上行結腸および下行結腸においては、後内側壁に位置します(Moore et al., 2021)。この構造は、大腸の縦走筋層が3本の帯状構造に集束することで形成され、他の2本である自由ヒモ(taenia libera)および大網ヒモ(taenia omentalis)と共に大腸の特徴的な外観を構成しています(Drake et al., 2019)。

組織学的には、間膜ヒモは外縦走筋層の肥厚部分であり、その幅は約1cmです(Standring, 2020)。3本のヒモは盲腸の虫垂根部から始まり、結腸全長にわたって走行しますが、直腸S状部の移行部で消失し、直腸では縦走筋が全周性に分布します(Netter, 2018)。間膜ヒモの長さは大腸壁全体の長さの約5分の4であり、この長さの不一致が大腸壁の膨起(haustra coli)形成の構造的基盤となっています(Drake et al., 2019)。

機能と役割

間膜ヒモは大腸の形態学的特徴である膨起(haustra)の形成に重要な役割を果たしています。ヒモの収縮により、ヒモ間の大腸壁が外方へ膨隆し、特徴的な袋状構造を形成します(Standring, 2020)。この膨起構造は静的なものではなく、大腸の内容物の量や蠕動運動の状態により動的に変化します(Moore et al., 2021)。

生理学的には、間膜ヒモを含む縦走筋帯は大腸の蠕動運動において重要な機能を担っています。ヒモの収縮と弛緩により、大腸内容物の混和と推進が促進され、水分吸収と糞便形成に寄与します(Drake et al., 2019)。また、ヒモの収縮は大腸の長さを短縮させ、効率的な内容物輸送を可能にします(Yeo et al., 2022)。

臨床的意義

臨床的には、間膜ヒモは消化器外科手術における重要な解剖学的指標です。腹腔鏡下結腸切除術や開腹手術において、間膜ヒモの位置は結腸間膜の付着部を同定する際の目印となり、適切な剥離層の決定に不可欠です(Netter, 2018; Yeo et al., 2022)。特に結腸癌手術では、間膜ヒモに沿って走行する血管(結腸動静脈の分枝)の処理が重要であり、腫瘍の完全切除とリンパ節郭清のために正確な解剖学的理解が求められます(Standring, 2020)。

大腸内視鏡検査においても、ヒモの配置は腸管の方向性や位置を把握する手がかりとなります。内視鏡医は膨起とヒモの走行パターンから、現在観察している結腸の部位を推定することができます(Moore et al., 2021)。

大腸憩室症の病態においては、間膜ヒモの解剖学的特性が重要な意味を持ちます。憩室は、ヒモ間の筋層が薄い部位において、血管が腸壁を貫通する部位(脆弱点)から粘膜が突出することで形成されます(Yeo et al., 2022)。特に間膜ヒモと自由ヒモの間、間膜ヒモと大網ヒモの間の領域は憩室好発部位であり、この解剖学的知識は憩室症の診断と治療計画において重要です(Drake et al., 2019)。

また、大腸軸捻転症や腸重積症などの病態理解においても、間膜ヒモを含む結腸の解剖学的構造の理解が不可欠です(Standring, 2020)。

参考文献