上十二指腸曲 Flexura duodeni superior

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J0686 (胃ほとんど空:正面からの図)

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J0692 (十二指腸と膵臓、および腹膜の覆い:前方からの図)

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J0714 (膵臓:右側、前面から見て引き伸ばされた図)

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J0723 (肝臓を引き上げたときの網嚢への入口)

定義と解剖学的位置

上十二指腸曲は十二指腸の第1部(上部)と第2部(下行部)の間に位置する急な屈曲部です (Standring, 2020)。解剖学的に第1腰椎の高さに位置し、胆嚢の内側(胆嚢頸部の後方)に隣接しています (Moore et al., 2018)。この部位は後腹膜に固定されており、肝十二指腸間膜の付着部に近接しています (Drake et al., 2020)。上十二指腸曲は幽門から約2-3cm遠位に位置し、右腎臓の前面を横切る形で配置されています (Sinnatamby, 2018)。

組織学的構造

上十二指腸曲の壁は、粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜層の4層構造を呈します (Ross and Pawlina, 2021)。粘膜層には輪状ひだ(Kerckring襞)が発達しており、吸収表面積を増大させています (Mescher, 2021)。粘膜下層にはブルンナー腺(十二指腸腺)が豊富に分布し、アルカリ性粘液を分泌して胃酸を中和します (Young et al., 2019)。筋層は内輪筋層と外縦筋層から構成され、蠕動運動を制御します (Kierszenbaum and Tres, 2020)。

血管支配と神経支配

血管支配としては、上膵十二指腸動脈(胃十二指腸動脈の分枝)と下膵十二指腸動脈(上腸間膜動脈の分枝)からの血液供給を受けています (Netter, 2019; Skandalakis, 2019)。これら2つの動脈系は上十二指腸曲の周囲で吻合し、豊富な血行網を形成します (Ellis, 2022)。静脈還流は主に膵十二指腸静脈を経て門脈系に流入し、最終的に肝臓へ血液を運びます (Drake et al., 2020)。リンパ排液は膵十二指腸リンパ節、幽門リンパ節を経て腹腔リンパ節へと至ります (Sinnatamby, 2018)。神経支配は主に腹腔神経叢由来の交感神経と迷走神経(副交感神経)によります (Ellis, 2022; Standring, 2020)。交感神経は血管運動と痛覚伝達を、副交感神経は運動機能と分泌機能を制御します (Hansen and Netter, 2019)。

生理学的機能

上十二指腸曲は消化過程において重要な役割を果たします (Barrett et al., 2019)。胃から送られてきた酸性の食塊は、この部位でブルンナー腺からのアルカリ性分泌物、膵液、胆汁と混和されます (Hall, 2021)。この中和作用により、下部消化管での酵素活性が最適化されます (Boron and Boulpaep, 2017)。また、十二指腸ホルモン(セクレチン、コレシストキニンなど)の分泌により、膵臓と胆嚢の機能が調節されます (Sherwood, 2019)。

臨床的意義

上十二指腸曲は消化性潰瘍の好発部位の一つであり、特に十二指腸潰瘍の約90%がこの周辺の球部に発生します (Yamada et al., 2018; Longo et al., 2022)。これはヘリコバクター・ピロリ感染や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)使用と関連しています (Sleisenger and Fordtran, 2021)。また、十二指腸憩室の発生部位としても知られており、特に主乳頭周囲に多く見られます (Schwartz, 2019)。上十二指腸曲の狭窄や閉塞は上部消化管閉塞の原因となり得ます (Agur and Dalley, 2021; Mulholland et al., 2020)。原因として、先天性狭窄、悪性腫瘍、膵炎による線維化などが挙げられます (Brunicardi et al., 2019)。胆道系疾患(胆石症など)の診断時には、胆嚢との解剖学的関係から上十二指腸曲の変位や圧迫所見が重要な診断的手がかりとなることがあります (Moore et al., 2018; Gore and Levine, 2018)。内視鏡検査では、この屈曲部の通過が技術的な難所となることがあり、特に内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)時には十分な注意が必要です (Paulsen and Waschke, 2022; Cotton and Williams, 2019)。穿孔のリスクは特にこの部位で高く、慎重な操作が求められます (Waye et al., 2018)。

参考文献