歯根膜 Periodontium

J0655 (上顎切歯の矢状断面とその周囲)

J0656 (下顎切歯(中切歯)を含む周囲を通る断面)
定義と基本構造
歯根膜(periodontal ligament)とは、歯槽骨と歯根のセメント質の間に存在する厚さ0.15-0.38mmの特殊な結合組織で、以下の特徴を持ちます (Nanci, 2017):
- 一端がセメント質に固定され、他端が歯槽骨に放散する線維組織(主に斜走する主線維束が特徴的)(Berkovitz et al., 2018)
- 細胞膜のような膜ではなく、密な線維性の結合組織として機能する (Ten Cate, 1998)
- 幅は歯頸部で約0.25-0.38mm、歯根中央部で約0.15-0.21mm、根尖部で約0.20-0.25mmと変化し、咬合力の分布に適応している (Coolidge, 1937)
- 高い代謝活性と再生能力を持ち、生涯を通じて組織のリモデリングが継続する (McCulloch, 1995)
組織学的構成要素
歯根膜は以下の組織から構成されています:
1. 線維成分
- 主線維束(シャーピー線維):歯根膜の約70%を占め、主に1型コラーゲン(約80-90%)から構成される太い膠原線維束 (Nanci, 2017)
- オキシタラン線維:弾性線維の前駆体で、血管周囲に分布し、血流調節に関与すると考えられている (Fullmer and Lillie, 1958)
- 3型コラーゲン線維:細い網状線維として組織の基本骨格を形成し、組織修復時に増加する (Berkovitz et al., 2018)
2. 細胞成分
- 線維芽細胞:歯根膜の主要な細胞で、コラーゲンなどの細胞外基質の産生と分解を担う。多分化能を持ち、骨芽細胞やセメント芽細胞へ分化可能 (Seo et al., 2004)
- 骨芽細胞と破骨細胞:歯槽骨側の表面に存在し、骨のリモデリングを担当する (Lindhe and Lang, 2015)
- セメント芽細胞:セメント質側の表面に存在し、セメント質の形成と修復に関与する (Bosshardt and Selvig, 1997)
- マラッセの上皮遺残(Malassez細胞遺残):歯の発生時のヘルトヴィッヒ上皮鞘の残存物で、歯根膜内に散在し、セメント質の過剰形成を防ぐ役割を持つ (Spouge, 1980)
- 神経周膜細胞とシュワン細胞:有髄神経線維を包む細胞 (Maeda et al., 1990)