耳下腺管 Ductus parotideus

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J0412 (側頭筋と頬筋:右側からの図)

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J0413 (右側の翼突筋:外側からの図)

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J0610 (顔の表在静脈:右側からの図)

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J0638 (口唇線と頬腺:前方からの図)

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J0671 (耳下腺、右側からの図)

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J0673 (口蓋:粘膜を取り除いた後に下方からの図)

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J0913 (下顎神経の分岐、深層:右方からの図)

耳下腺管は唾液腺導管系の重要な解剖学的構造で、以下の特徴と臨床的意義を持ちます (Standring, 2023):

耳下腺管の解剖学的構造

耳下腺管(Ductus parotideus)は、耳下腺実質から発し、咬筋の外側表面を横切り、頬骨弓の下方約2cmを水平に走行します (Moore, Dalley and Agur, 2023)。頬筋を貫通した後、上顎第2大臼歯の対側の頬粘膜に開口します(ステノ氏孔)(Drake, Vogl and Mitchell, 2024)。管壁は重層円柱上皮で構成され、周囲を結合組織が取り囲んでいます (Netter, 2023)。構造的には、直径約3mm、長さ約5cmの管状構造を呈します (Standring, 2023)。

臨床的意義

唾石症

耳下腺管内に唾石が形成されることにより、唾液の流れが妨げられる病態が知られています (Harrison et al., 2024)。これは耳下腺管の機能障害の主要な原因の一つです。唾石の形成は食事中の疼痛や腫脹を引き起こし、適切な治療介入が必要となります (Harrison et al., 2024)。

外科的考慮事項

顔面手術を施行する際には、耳下腺管の解剖学的走行に細心の注意を払う必要があります (Moore, Dalley and Agur, 2023)。管の損傷は唾液瘻などの合併症を引き起こす可能性があり、外科医は咬筋表面を横切る管の走行を十分に理解しておく必要があります (Drake, Vogl and Mitchell, 2024)。

診断的重要性

耳下腺造影検査において、耳下腺管は重要な解剖学的ランドマークとして機能します (Standring, 2023)。造影検査により、管の閉塞や狭窄、異常な走行を可視化することができます。

歴史的背景

この構造は1661年にデンマークの解剖学者ニールス・ステノ(Niels Stensen, 1638-1686)によって発見され、ステンセン管(Stensen's duct)またはステノン管としても知られています (Gray and Lewis, 2024)。ステノはコペンハーゲン大学で医学を学び、唾液腺の解剖学的研究において先駆的な業績を残しました。耳下腺からの唾液分泌において重要な役割を果たし、その機能障害は口腔内の健康に直接影響を及ぼします (Netter, 2023)。

機能的側面

耳下腺管は漿液性唾液を口腔内に運搬し、消化の初期段階において重要な役割を果たします (Moore, Dalley and Agur, 2023)。唾液に含まれるアミラーゼは炭水化物の消化を開始し、また口腔内の清浄化と抗菌作用にも寄与しています (Standring, 2023)。

参考文献