肩甲下筋

肩甲下筋は、以下のような特徴を持つ重要な筋肉です:

肩甲下筋は肩関節の安定性と機能に不可欠な役割を果たしています。

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J0163 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:背面からの図)

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J0175 (右上腕骨とその筋の起こる所と着く所:前方からの図)

J0176 (右上腕骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

肩甲下筋は肩甲骨の肋骨面の大部分を覆い、肩甲下窩を占め、腋窩の後壁を形成します。この筋肉は肩甲下窩と筋膜から起始し、烏口突起の下を外側に進みながら集束し、停止腱を形成します。この腱はさらに外側へ進み、肩関節包と癒着し、最終的に上腕骨の小結節と小結節稜の上部に止まります。

肩甲下筋は肩関節固有の筋であり、その腱は回旋筋腱板の形成に関与します。この腱板は肩甲下窩を覆い、繊維束は肩甲骨と肋骨の接合部に沿った筋肉の線に付着し、小結節で止まります。一部の繊維は関節包にも止まります。

肩甲下筋は上下肩甲下神経によって神経支配され、これらの神経は腕神経叢後索から分岐した第五・第六頚神経に由来します。肩甲下筋の主な動作は腕の内旋で、持続的な収縮によって上腕骨頭を関節窩に固定します。

Kameda (1976)によると、肩甲骨の外側縁に近い肩甲下筋の表面または広背筋の停止腱、あるいはその両方から起始し、腕神経叢背側層を貫き肩甲下筋の停止腱に合流する異常筋が2.6%の頻度で出現し、肩甲下神経と胸背神経に類似する神経によって支配されると述べています。

Kameda (1976)はこの筋をAccessory subscapularis-teres-latissimus muscleと呼び、肩甲下筋、大円筋、広背筋からなる筋群の一部と考えています。小肩甲下筋(宮沢, 1956)、副肩甲下筋(高藤ら,1991 a)もこの異常筋と考えられます。また、下部頚椎横突起から起こり、腕神経叢の背側を走り、上腕骨小結節稜および周辺の筋肉の筋膜に止まる頚腕筋も肩甲下筋の迷筋の可能性があります(中尾,1964; 国府田ら,1991)。