脊柱起立筋 Musculus erector spinae

J0217 (右の寛骨:筋の起こる所と着く所を示す内側からの図)

J0451 (腰部の筋(第2層):背面図)

J0452 (腰部の筋:横断図)

J0585 (右腰動脈の分岐:腰椎の一部と筋、右側および少し頭側からの図)
脊柱起立筋は、腰背筋群の中で最大かつ最も表層に位置する筋群であり、腸肋筋(M. iliocostalis)、最長筋(M. longissimus)、および棘筋(M. spinalis)の3つの筋束から構成されています(Standring, 2016)。これらの筋は共通の起始部を持ちながらも、それぞれ異なる走行と付着部を持ち、脊柱の運動と姿勢保持において中心的な役割を果たします。
解剖学的特徴
起始
脊柱起立筋は、仙骨後面、腸骨稜後部、腰椎および下部胸椎の棘突起、棘突起間靱帯、さらに仙腸靱帯から起こります(Moore et al., 2018)。これらの起始部は厚い共通腱(脊柱起立筋腱、erector spinae aponeurosis)として一体化しており、L4-S3レベルで最も顕著です。この共通腱は腰背筋膜の深層と密接に連結し、力の伝達機構として機能します(Bogduk, 2005)。
走行と停止
脊柱起立筋は、共通起始部から頭側に向かって3つの筋束に分かれます:
- 腸肋筋(M. iliocostalis):最も外側に位置し、さらに以下の3つの部分に細分されます:
- 腸肋腰筋(M. iliocostalis lumborum):腸骨稜から第6-12肋骨の下縁に停止
- 腸肋胸筋(M. iliocostalis thoracis):下部6肋骨から上部6肋骨の上縁に停止
- 腸肋頸筋(M. iliocostalis cervicis):上部6肋骨からC4-C6の横突起後結節に停止
- 最長筋(M. longissimus):中間に位置し、最も長大な筋束です:
- 最長胸筋(M. longissimus thoracis):仙骨・腰椎から全胸椎の横突起および第2-12肋骨の肋骨角付近に停止
- 最長頸筋(M. longissimus cervicis):上部胸椎の横突起からC2-C6の横突起後結節に停止
- 最長頭筋(M. longissimus capitis):上部胸椎・下部頸椎の横突起から側頭骨の乳様突起に停止
- 棘筋(M. spinalis):最も内側に位置し、棘突起間を連結します:
- 棘胸筋(M. spinalis thoracis):T11-L2の棘突起からT1-T8の棘突起に停止
- 棘頸筋(M. spinalis cervicis):C6-T2の棘突起からC2-C4の棘突起に停止
- 棘頭筋(M. spinalis capitis):通常、半棘頭筋(M. semispinalis capitis)と融合
これらの筋は、形態学的・機能的には以下のように分類されます(Clemente, 1985; Bogduk, 2005):
- 外側系(Lateral tract):腸肋筋と最長筋 — 主に脊柱の伸展と側屈に関与
- 内側系(Medial tract):棘筋 — 主に脊柱の伸展に関与
筋膜構造
脊柱起立筋は広範な腱膜(脊柱起立筋腱膜)に覆われており、この腱膜は腰背筋膜(胸腰筋膜、thoracolumbar fascia)の一部を形成します(Willard et al., 2012)。腰背筋膜は以下の3層構造を持ちます:
- 前層:大腰筋を覆う
- 中層:脊柱起立筋の前面を覆う
- 後層:脊柱起立筋の後面を覆い、広背筋の腱膜と連続
この筋膜システムは、筋の固定、力の伝達、腹腔内圧の調整に重要な役割を果たし、体幹の安定性に寄与します(Barker et al., 2004)。