上後鋸筋 Musculus serratus posterior superior
上後鋸筋は背部筋群の表層に位置する扁平な四角形の筋肉で、解剖学的および臨床的に重要な以下の特徴を持ちます(Standring, 2020):

J0450 (腰部の筋(第1層)、後方からの図)

J0451 (腰部の筋(第2層):背面図)

J0453 (広い背筋(第3層):背面図)
解剖学的特徴
- 形態と構造: 薄くて強い筋膜様の構造を持ち、その起始部は主に腱膜として存在します(Schuenke et al., 2016)
- 起始: 第6、第7頚椎と第1、第2胸椎の棘突起および項靱帯から起始します(文献により第5頚椎から第1胸椎までとする記載もあります)(Loukas et al., 2019)
- 走行: 外下方に斜走し、菱形筋の深層に位置しています(Netter, 2018)
- 停止: 第2~第5肋骨(多くの場合は第1~第4)の肋骨角の外側に鋸歯状に停止します(Ellis and Mahadevan, 2018)
- 支配神経: 第1~4胸神経の背側枝から分枝した肋間神経が支配し、各筋尖は1つまたはそれ以上の分節神経に支配されます(堀口, 2000)
- 血液供給: 後肋間動脈および第3、第4肋間動脈の枝により栄養されます(Standring, 2020)
機能
- 主機能: 上位肋骨の挙上を補助し、胸郭の拡張に寄与することで吸気を促進します(Smith et al., 2017)
- 呼吸補助筋: 特に深呼吸時や努力性吸気時に活動が増加します(Lee et al., 2013)
- 胸郭安定化: 肋間筋と協調して胸郭の安定性維持に貢献します(Kendall et al., 2005)
臨床的意義
- 呼吸困難との関連: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息などの呼吸器疾患患者では、代償性に活動が増加することがあります(Park et al., 2015)
- 筋膜性疼痛: 上後鋸筋の過緊張や筋膜トリガーポイントは、胸背部痛の原因となることがあり、理学療法の対象となります(Gerwin et al., 2014)
- 外科的考慮点: 背部手術アプローチにおいて考慮すべき筋層の一つです(Ellis and Mahadevan, 2018)
- 画像診断: MRIやCTスキャンでは薄い構造のため、しばしば明確な描出が困難です(Loukas et al., 2019)
発生学と比較解剖学