小菱形筋

小菱形筋は、以下のような特徴を持つ筋です:

解剖学的な特徴:

小菱形筋は、肩甲骨の動きと安定性に重要な役割を果たしています。

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J0164 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:前面からの図)

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

菱形筋は脊柱と肩甲骨の間に存在し、大菱形筋と小菱形筋の2つで構成されています。大菱形筋の主な機能は肩甲骨を脊柱に引き寄せることで、一方、小菱形筋は肩甲骨を引き寄せて安定させます。これらの筋肉は僧帽筋に覆われ、肩甲挙筋とともに浅背筋第2層に分類され、頚腕神経叢によって制御される上肢帯筋です。両筋肉の境界には血管が通っています。

大菱形筋と小菱形筋は、頚横動脈深枝(肩甲背動脈)の枝(貫通枝)を伴う結合組織層により、ほぼ9割の頻度で区分されます(Nishi, 1953 b)。この区分は、起始と停止が必ずしも明確でない場合もありますが、筋内神経分布によれば明確であるとされています(Eisler, 1912)。

起始は項靱帯と棘突起および棘間靱帯です。上限は第4(17%)または第5(53%)頚椎棘突起の高さの項靱帯、あるいは第6(27%)または第7(3%)頚椎棘突起、下限は第3(3%)、第4(29%)、第5(51%)、第6(15%)、第7(2%)胸椎棘突起です(Nishi, 1953 b)。筋束は、ほぼ平行に外側下方に進行し、肩甲骨内側縁(肩甲挙筋が停止する上部を除く)に停止します。

多くの解剖学書には、C5に起始する1本の腕神経叢の肩甲背神経が本筋を支配していると記載されています。しかし、実際には、頚腕神経叢の背側層から発生する神経で、C4とC5に起始する少なくとも2本の神経が支配する場合が84%、C5単独が14%、C4単独が3%です(加藤・佐藤,1978)。C4は肩甲挙筋に枝を与えてこれを貫き、C5は中斜角筋を貫いてから肩甲挙筋に枝を与えずに筋の下縁(内側縁)を回って菱形筋に至るとされています。また、C5は、前鋸筋に分布するC5と神経叢から共通幹で発生することが多い(図3)(加藤・佐藤,1978)。