小菱形筋 Musculus rhomboideus minor
小菱形筋は、背部の浅層筋群に属する重要な骨格筋であり、肩甲骨の位置制御と上肢機能に不可欠な役割を果たします。以下に、その詳細な解剖学的構造と臨床的意義について述べます。

J0164 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:前面からの図)

J0449 (広い背中の筋(第2層):背面図)

J0933 (右肩甲骨の神経:後方からの図)
解剖学的特徴
位置と形態
- 位置:小菱形筋は第7頸椎(C7)から第1胸椎(T1)の棘突起と肩甲骨上部内側縁の間に位置し、僧帽筋の深層に存在します (Gray, 2020; Standring, 2021)。
- 形態:その名の通り菱形を呈する平坦な筋で、厚さは約3-5mm、幅は約4-5cmと比較的小型の筋肉です (Standring, 2021)。
- 筋線維の走行:筋線維は斜め下外側方向に走行し、起始部から停止部に向かって広がるように配列しています (Moore et al., 2018)。
- 筋膜関係:筋肉は薄い筋膜に覆われており、深層では前鋸筋や肋骨表面と接触しています (Netter, 2019)。
起始と停止
- 起始:項靱帯の下部、第7頸椎(C7)棘突起、第1胸椎(T1)棘突起、およびこれらの間の棘間靱帯から腱性に起始します (Netter, 2019; Gray, 2020)。起始部の面積は約2-3cm²です。
- 停止:肩甲骨内側縁の上部、特に肩甲骨棘の基部レベルに停止します。停止部は肩甲骨の三角形の平滑な領域に付着し、その面積は約3-4cm²です (Standring, 2021; Moore et al., 2018)。
- 大菱形筋との関係:小菱形筋は大菱形筋の上方(頭側)に位置し、両筋の間には通常明確な境界が存在しますが、約15%の症例では連続した単一の筋として存在します (Bergman et al., 2016)。
神経支配
- 支配神経:背側肩甲神経(dorsal scapular nerve、C4-C5神経根由来)により神経支配を受けます (Moore et al., 2018; Standring, 2021)。
- 神経の走行:背側肩甲神経は腕神経叢の上部幹から分岐し、中斜角筋を貫通した後、肩甲挙筋と菱形筋群を支配します (Gray, 2020)。
- 神経分布:小菱形筋には通常2-3本の神経枝が進入し、筋の深層面から侵入します (Netter, 2019)。
血液供給
- 主要動脈:頸横動脈(transverse cervical artery)の深枝である背側肩甲動脈(dorsal scapular artery)により主に栄養されます (Gray, 2020; Standring, 2021)。
- 副次的血液供給:一部の症例では、深頸動脈や肋頸動脈からの枝も小菱形筋の血液供給に関与します (Moore et al., 2018)。