広背筋

広背筋は、背中に広く広がる大きな筋肉です。その主な特徴は以下の通りです:

広背筋は、背中の形状や上肢の動きに重要な役割を果たす主要な筋です。

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J0175 (右上腕骨とその筋の起こる所と着く所:前方からの図)

J0176 (右上腕骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

広背筋は、神経支配と発生の観点から見ると、大円筋と同様に背中に大きく広がる筋肉で、元々は肩甲骨下角に起始していたと解釈できます。通常は僧帽筋とともに浅背筋第一層に含められますが、この解釈に基づき、大円筋と肩甲下筋を含む筋群にも分類されることがあります。上部は僧帽筋に覆われています。

広背筋の起始部は、肩甲骨下角、胸腰筋膜浅葉、腸骨稜、下位肋骨から始まります。胸腰筋膜浅葉の起始範囲には変異がありますが、その延長部は第7胸椎棘突起に達します。高さで表現すると、第7胸椎棘突起が66%、第6が25%、第8が6%、第5が3%となります(Nishi, 1953 b)。また、肋骨からの起始の上端は、第10肋骨が60%、第9が36%、第11が4%ですが、第12は38%の頻度で欠如します(Nishi, 1953 b)。さらに、肩甲骨下角からの起始も欠如することがあり(8%)、また腸骨稜からの起始も欠如することがあります(Nishi, 1953 b)。筋束は、比較的薄い筋板で始まり、腋窩に向かって集束し、厚くなります。筋束は大円筋の後ろに位置し、その筋の下外側に沿って表裏を翻転し、停止腱に移行し、大円筋の前に位置します。停止腱は、大円筋の停止部の前やや近位に並んで上腕骨小結節稜から結節間溝に停止します。

停止の異常としては筋(腱)性腋窩弓がよく知られていますが、これは大胸筋の項で取り扱います。稀に第1肋骨に停止する副束が存在します(Miyauchi, 1982 a)。神経支配の異常としては、稀に後上腕皮神経の枝が停止部近くに分布することがあり、これは哺乳類一般に見られる背上顆筋M. dorsoepitrochlearis(上腕骨内側上顆から起始し、広背筋の腱に停止する)の遺残形態と理解されます(堀口ら、1992 a)。