広背筋 Musculus latissimus dorsi
広背筋は、背部に広く分布する扇状の大型筋で、「水泳筋」とも呼ばれます。体幹と上肢を結ぶ重要な筋肉であり、解剖学的構造と臨床的意義は以下の通りです(Gray and Standring, 2016; Netter, 2019):

J0175 (右上腕骨とその筋の起こる所と着く所:前方からの図)

J0176 (右上腕骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)

J0217 (右の寛骨:筋の起こる所と着く所を示す内側からの図)

J0427 (広頚筋を除去した後の右胸部の筋:腹側図)

J0429 (右の胸筋(第2層)、正面からの図)

J0435 (腹筋:右側前方からの図)

J0438 (腹筋(第2層):腹面図)

J0440 (腹直筋:腹面図)

J0448 (広い背筋:背面図)

J0449 (広い背中の筋(第2層):背面図)

J0450 (腰部の筋(第1層)、後方からの図)

J0451 (腰部の筋(第2層):背面図)

J0452 (腰部の筋:横断図)

J0462 (右脇の下の筋:尾側図)

J0463 (右腋窩の筋膜:尾側図)

J0466 (右上腕の筋:掌側図)

J0574 (右腋窩の動脈、正面図)

J0615 (右の腋窩の静脈:前面図)

J0927 (脊髄神経の後枝:後方からの図)

J0934 (右の腕神経叢(鎖骨下部)が下から前に向かっている図)

J0939 (右上腕の神経幹:内側からの図)

J0940 (右上腕の筋神経:前方からの筋)

J0947 (右上腕の筋神経:後方からの図)

J0954 (体幹の皮神経:正面右側からの図)
解剖学的特徴
起始
広背筋は広範囲から起始する多起始筋で、以下の部位から起始します(Gray and Standring, 2016; Netter, 2019):
- 脊柱起始部:
- 下位6胸椎(T7-T12)の棘突起と棘上靭帯
- 全腰椎(L1-L5)の棘突起と棘上靭帯
- 仙骨正中稜(胸腰筋膜の浅層を介して)
- 骨盤起始部:腸骨稜後部1/3(胸腰筋膜の付着部を介して)
- 肋骨起始部:第10~12肋骨外側面(時に第9肋骨も含む)。外腹斜筋と交叉して付着します
- 肩甲骨起始部:肩甲骨下角(約60%の症例で存在する変異)(Loukas et al., 2014)
これらの起始部から発する筋線維は、上外側に向かって収束しながら走行します。
停止
上腕骨小結節稜(結節間溝の底部)に腱性に停止します。筋は大円筋の下縁を前方に回り込むように走行し、腋窩後壁を形成します。停止腱は幅約7-10cmの扁平な構造で、大円筋腱の前方に位置します(Moore et al., 2018)。
筋の構造と走行
- 筋線維の配列:広い扇状の筋で、下方・後方の広範な起始部から上外側に向かって収束します
- 筋の捻転:上腕骨に近づくにつれて約180度捻転し、筋腹の深層(下方起始)の線維が停止部では表層(前方)となり、筋腹の表層(上方起始)の線維が停止部では深層(後方)となります(Moore et al., 2018)
- 筋の厚さ:起始部では薄い筋膜様ですが、腋窩に向かうにつれて厚さを増し、停止部では厚い腱を形成します
神経支配
胸背神経(Thoracodorsal nerve、C6-C8、主にC7)により支配されます。この神経は腕神経叢の後神経束から分岐し、腋窩の後壁を下行し、肩甲下動脈と伴行して広背筋の深層(前面)に進入します。神経損傷は腋窩郭清術や外傷で生じ得ます(Bergman et al., 2020)。
血液供給