皺眉筋 Musculus corrugator supercilii

J0077 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所:右方からの図)

J0079 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所を示す:前面からの図)

J0407 (右眼瞼の筋:腹方からの図)

J0408 (右眼瞼の筋:背方からの図)
解剖学的特徴
皺眉筋は表情筋群に属する小さな深部筋で、眉間の動きと表情形成に重要な役割を果たします。以下の詳細な解剖学的特徴を持ちます(Gray, 2020; Standring, 2021):
起始と停止
- **起始部:**前頭骨の眉間部(glabella)、特に鼻骨上部付近の骨膜から起始します。起始部は前頭骨の内側眼窩上縁の近くに位置し、眉弓(superciliary arch)の内側部分に密接に関連しています。
- **走行:**眉頭部から外側上方に向かって斜走し、約45度の角度で走行します。筋線維は後頭前頭筋の前頭腹の筋線維束内側縁部を貫通して表層に達します。この走行により、筋肉は深部から表層へと移行し、皮膚に直接作用できる位置に到達します。
- **停止部:**眉毛の中央から外側部の皮膚および真皮に停止します。停止部は眉弓の皮膚と密接に結合しており、この結合により筋収縮が直接皮膚の動きに変換されます。
神経支配と血管供給
- **神経支配:**顔面神経(第VII脳神経、CN VII)の側頭枝(temporal branch)が支配しています。この神経は耳下腺を通過した後、顔面の上部に分布し、皺眉筋を含む複数の表情筋を支配します(Neligan, 2018)。
- **動脈供給:**主に眼窩上動脈(supraorbital artery)と滑車上動脈(supratrochlear artery)から血液供給を受けます。これらは内頸動脈系の眼動脈の分枝です。
- **静脈還流:**眼窩上静脈と滑車上静脈を介して顔面静脈系に還流します。
筋肉の構造的特徴
- 皺眉筋は小型の筋肉で、長さは約20-30mm、幅は約5-10mmです(Tamura et al., 2018)。
- 筋線維は主に速筋線維(type II)で構成されており、素早い収縮が可能です。これは表情の迅速な変化に対応するための適応です。
- 眼輪筋、前頭筋、鼻根筋と解剖学的に密接に関連しており、これらの筋肉と協調して複雑な表情を形成します。
機能
皺眉筋は表情形成において以下の重要な機能を果たします:
主要機能
- **眉間皺の形成:**眉毛を内側かつ下方に引き寄せ、眉間に垂直な皺(いわゆる「怒り線」または「11の字ジワ」)を形成します(Tamura et al., 2018)。この動きは左右の皺眉筋が同時に収縮することで実現されます。