大腿骨頭靭帯 Ligamentum capitis femoris

J0003 (大人の新鮮な右大腿骨の近位部、前方からの図)

J0333 (右の股関節:内側からの図)

J0334 (右の股関節:前面切断図、前方からの後部切断図)
解剖学的構造
大腿骨頭靭帯(円靭帯)は、股関節内に位置する関節内靭帯です(Standring, 2016; Gray's Anatomy, 2020)。以下の詳細な解剖学的特徴を持ちます:
- **起始と停止:**大腿骨頭窩(fovea capitis femoris)から起こり、寛骨臼横靭帯(transverse acetabular ligament)および寛骨臼切痕(acetabular notch)を挟んだ月状面(lunate surface)の両端に付着します(Bardakos & Villar, 2009)
- **形状と構造:**三角柱状または円錐形を呈し、全体が滑膜に覆われています。長さは約3-3.5cm、直径は約1cmですが、個体差が大きいです(Standring, 2016)
- **組織学的構成:**密性結合組織からなり、膠原線維が主体です。滑膜鞘に包まれているため、関節腔内に存在しながらも厳密には関節腔外の構造とも言えます(Gray's Anatomy, 2020)
- **血管供給:**閉鎖動脈の枝である大腿骨頭動脈(arteria ligamenti capitis femoris)がこの靭帯を通過し、大腿骨頭に栄養を供給します(Trueta & Harrison, 1953)。ただし、この血管の重要性は年齢とともに変化します
- **個人差:**靭帯の太さや強度には顕著な個人差があり、一部の個体では非常に細いか、まれに欠損することもあります(Bardakos & Villar, 2009)
機能的役割
大腿骨頭靭帯の機能については議論がありますが、以下の役割が考えられています:
- **力学的役割:**股関節の外転・外旋・伸展時にわずかに緊張し、極端な運動を制限する可能性がありますが、主要な安定化機能は限定的です(Bardakos & Villar, 2009)
- **血管通路:**特に小児期において、大腿骨頭への重要な血管供給路として機能します(Trueta & Harrison, 1953)
- **固有受容感覚:**機械受容器が存在し、関節の位置感覚に寄与している可能性があります(Martin et al., 2017)
臨床的意義
大腿骨頭靭帯は以下の臨床状況において重要です:
- **小児の血液供給:**小児期(特に4-8歳頃まで)では、この靭帯を通る血管が大腿骨頭への主要な血液供給源の一つであり、大腿骨頭壊死(Legg-Calvé-Perthes病)などの病態と関連します(Trueta & Harrison, 1953)
- **成人の血液供給:**成人では、外側大腿回旋動脈の枝が主要な血液供給源となり、大腿骨頭靭帯を通る血管の重要性は低下します(Trueta & Harrison, 1953)。しかし、大腿骨頸部骨折や股関節脱臼時には代償的な血流経路として重要になることがあります
- **股関節脱臼:**外傷性股関節脱臼(特に後方脱臼)では、この靭帯が断裂することがあります(Byrd & Jones, 2004)。また、脱臼整復後の大腿骨頭壊死のリスク評価において考慮されます