踵骨溝 Sulcus calcanei

J0253 (右の踵骨、上方からの図)

J0254 (右の踵骨:内側からの図)
定義と位置
踵骨溝は、踵骨の上面(背側面)に存在する溝状の構造で、中距骨関節面と前距骨関節面の間に位置します(Sarrafian, 1993)。この溝は後内側から前外側に向かって斜めに走行し、距骨の距骨溝(sulcus tali)と対応して足根洞(sinus tarsi)を形成します(金子ら, 2018)。
解剖学的特徴
- 走行方向:踵骨溝は中距骨関節面の前方から前距骨関節面の後方にかけて、後内側から前外側に向かって斜めに走行します(Sarrafian, 1993)
- 形状:外側半分は踵骨の前縁まで広がり、広い凹凸面を形成しています。内側半分は比較的狭く、深い溝状を呈します(金子ら, 2018)
- 足根洞の形成:踵骨溝と距骨溝が向かい合うことで、足根洞という漏斗状の空間を形成します。この空間は前外側が広く開口し、後内側に向かって狭くなります(Sarrafian, 1993)
足根洞の構造と内容物
踵骨溝が形成に関与する足根洞は、以下の重要な構造を含みます:
- 靱帯構造:頸靱帯(cervical ligament)、骨間距踵靱帯(interosseous talocalcaneal ligament)などの強靱な靱帯が足根洞内を通過し、距骨と踵骨を強固に連結します(Sarrafian, 1993; 金子ら, 2018)
- 脂肪組織:足根洞内には脂肪組織が充満しており、関節の可動性を保ちながらクッションの役割を果たします(Balen & Helms, 2001)
- 血管と神経:足根洞には血管や神経線維が分布しており、距踵関節の栄養と感覚を担っています(Sarrafian, 1993)
機能的意義
踵骨溝と足根洞は、距骨下関節(subtalar joint)の安定性と可動性において重要な役割を果たします。足根洞内の靱帯は、回内・回外運動時の距骨と踵骨の過度な動きを制限し、足部の安定性を維持します(Sarrafian, 1993; 金子ら, 2018)。
臨床的重要性
1. 足根洞症候群(Sinus Tarsi Syndrome)
足関節捻挫後や反復性の微小外傷により、足根洞内の靱帯や脂肪組織に炎症や線維化が生じることがあります(O'Neill et al., 2008)。これにより以下の症状が現れます:
- 外側足部の疼痛:特に足根洞の領域に限局した痛みが特徴的です(Helgason & Gislason, 2016)
- 不安定感:不整地での歩行時に足部の不安定感を自覚します(O'Neill et al., 2008)