腸骨窩は骨盤を構成する重要な解剖学的構造であり、臨床医学において診断・治療の重要な指標となります。以下に解剖学的特徴と臨床的意義を詳述します(Drake et al., 2020; Standring, 2021)。



腸骨窩(Fossa iliaca)は、骨盤を構成する寛骨の腸骨部に位置する広く浅い凹面構造です。骨盤内側の下腹部に位置し、腸骨翼(ala of ilium)の内側面の前方約2/3を占めています(Standring, 2021)。この窩は滑らかで平滑な凹面を呈し、骨盤内腔に面しています(Moore et al., 2018)。
腸骨窩の内面は主に腸骨筋(iliacus muscle)によって完全に覆われています。腸骨筋は腸骨窩全体から起始し、扇状に広がって下方に向かいます(Standring, 2021)。腸骨窩の表面には小さな血管孔が多数存在し、栄養血管が骨に進入する部位となっています(Drake et al., 2020)。
腸骨窩の前面には腹膜が覆い、この部位は後腹膜腔に相当します。腹膜を介して、腸骨窩の前方には盲腸および上行結腸(右側)、またはS状結腸(左側)が位置します(Moore et al., 2018)。
腸骨窩を構成する骨は主に海綿骨(cancellous bone)で構成され、その表面は薄い緻密骨(compact bone)で覆われています。海綿骨の骨梁は応力線に沿って配列し、体重負荷と筋力に対する耐性を提供しています(Standring, 2021)。
腸骨窩の最も重要な機能は、腸骨筋の起始部を提供することです。腸骨筋は腸骨窩の全面から起始し、筋線維は下内側方向に収束しながら走行します(Drake et al., 2020)。腸骨筋は骨盤を出て鼠径靱帯の下を通過し、大腿部に進入します。
腸骨筋は大腰筋(psoas major muscle)と合流して腸腰筋(iliopsoas muscle)を形成します。両筋の腱は融合し、大腿骨の小転子(lesser trochanter of femur)に停止します(Neumann, 2017)。この複合筋は股関節の最も強力な屈筋として機能します。