後縁(尺骨の)Margo posterior ulnae

J0178 (右の尺骨:橈側からの図)

J0181 (右前腕骨の中央部断面:回外位での上方からの図)
解剖学的概要
尺骨の後縁(Margo posterior ulnae)は、尺骨体(corpus ulnae)の3つの縁のうちの1つで、尺骨の後面を構成する重要な解剖学的ランドマークです(Moore et al., 2018)。尺骨は前腕の内側(小指側)に位置する長管骨で、橈骨とともに前腕骨格を形成しています(Standring, 2020)。
位置と走行
- 後縁は尺骨体の後方を縦走し、近位端の肘頭(olecranon)から遠位端の尺骨頭(caput ulnae)に向かって走行します(Gray, 1918)。
- 前縁(margo anterior)と骨間縁(margo interosseus)とともに、尺骨体の三角柱状の形態を形成しています(Moore et al., 2018)。
- 上部3分の2は明瞭で触知可能ですが、下部3分の1では次第に不明瞭になります(Standring, 2020)。
解剖学的関係
- 後縁は尺骨の後面(facies posterior)と内側面(facies medialis)の境界を形成します(Gray, 1918)。
- この縁は皮下に位置するため、体表から容易に触知することができます(Moore et al., 2018)。
- 後縁に沿って、尺側手根伸筋(extensor carpi ulnaris)と尺側手根屈筋(flexor carpi ulnaris)の起始部が付着します(Standring, 2020)。
- 深層では、深指屈筋(flexor digitorum profundus)の一部も後縁付近から起始します(Moore et al., 2018)。
筋付着部
- 尺側手根伸筋:後縁の近位部から起始し、前腕後面の尺側を走行して第5中手骨底に停止します。手関節の尺屈と伸展に関与します(Standring, 2020)。
- 尺側手根屈筋:後縁の内側面に沿って起始し、前腕屈側の尺側を走行して豆状骨、有鉤骨、第5中手骨底に停止します。手関節の尺屈と屈曲に関与します(Moore et al., 2018)。
臨床的意義
尺骨の後縁は、以下のような臨床的に重要な意味を持ちます:
- 体表指標:後縁は皮下にあり触知しやすいため、前腕の解剖学的評価や骨折の診断において重要な体表指標となります(Hoppenfeld, 1976)。肘頭から尺骨茎状突起(processus styloideus ulnae)まで触診することで、尺骨の連続性や変形の有無を確認できます。
- 尺骨骨折:尺骨骨幹部骨折は、直達外力や介達外力によって生じます(Rockwood et al., 2015)。後縁の変形や転位は触診で評価可能です。特に、橈骨骨折を伴う前腕両骨骨折では、尺骨後縁の整復が前腕の回内・回外運動の回復に重要です(Jupiter & Ring, 2003)。