後面(尺骨の)Facies posterior ulnae

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J0178 (右の尺骨:橈側からの図)

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J0181 (右前腕骨の中央部断面:回外位での上方からの図)

解剖学的特徴

尺骨の後面(背側面)は、前腕の伸筋群が付着する重要な解剖学的領域です(Standring, 2020)。この面は以下の詳細な構造を有しています:

筋付着部位

溝と隆起

茎状突起(Processus styloideus)と関節環状面(尺骨頭の関節面)の間には、尺側手根伸筋の腱が通過する深い溝(Sulcus)が存在します(Rauber & Kopsch, 2003)。この溝は腱の滑走を円滑にし、手関節運動時の機能を保証します。

関節円板付着部

尺骨頭の下面には、茎状突起と尺骨頭下面の関節面との間に粗造なくぼみ(Fovea)が認められます。このくぼみには**三角線維軟骨複合体(TFCC: Triangular Fibrocartilage Complex)**の一部である関節円板(Discus articularis)が付着します(Palmer & Werner, 1981)。

この関節円板は、橈骨の尺骨切痕(Incisura ulnaris radii)の下縁から生じ、遠位橈尺関節を安定化させるとともに、尺骨頭と手根骨(特に月状骨と三角骨)を分離する重要な構造です(Palmer & Werner, 1981)。

臨床的意義

1. 骨折

尺骨後面は直達外力による骨折の好発部位です。特に防御姿勢での直接打撃により、尺骨骨幹部骨折(Nightstick fracture)が生じることがあります(Bostman et al., 2003)。後面の筋付着部が骨折転位に影響を及ぼします。

2. TFCC損傷

関節円板の付着部であるくぼみの損傷は、手関節尺側部痛の主要な原因となります(Atzei et al., 2009)。外傷や変性により、TFCC損傷が生じると、遠位橈尺関節の不安定性、手関節運動時痛、握力低下などが出現します(Palmer & Werner, 1981)。

3. 腱鞘炎