橈骨粗面 Tuberositas radii
橈骨粗面は、上肢の前腕部に位置する重要な解剖学的構造で、以下の特徴と臨床的意義を持ちます (Gray, 2020; Standring, 2021):
解剖学的特徴
- 位置:橈骨体の前内側面上部に位置し、橈骨頭から約2-2.5cm遠位に存在します (Standring, 2021)。
- 構造:粗造な卵円形の隆起として触知でき、前方かつやや内側に向いています (Moore et al., 2018)。
- 大きさ:成人では平均約2cm×1cmの大きさで、個人差や性差があります (Platzer, 2018)。
- 筋付着:主に上腕二頭筋腱(biceps brachii tendon)の強固な付着部となっています。この腱は橈骨粗面に螺旋状に巻きついて付着します (Netter, 2019)。
- 周囲構造:内側に回内筋(pronator teres)が付着し、外側に橈骨神経浅枝が走行します (Chung, 2015)。
形態学的分類
橈骨粗面は形状により以下の4型に分類されます (Matsumura et al., 2015):
- I型:楕円形に均一に隆起する型(約57.8%)- 最も一般的な形態
- II型:内後方が特に突出し堤状になる型(約18.0%)- 上腕二頭筋の強い牽引力を反映
- III型:隆起はあるが表面が平坦な型(約16.8%)- 筋力の中程度の発達を示す
- IV型:周縁が隆起し中央部が陥凹する型(約7.4%)- 特徴的な形態で、腱の牽引様式と関連
性差と年齢変化
橈骨粗面には顕著な性差と年齢による変化が認められます (Kato et al., 2016):
- 女性では一般的に発達が弱く、隆起が緩やかで面積も小さい傾向があります (Ozaki et al., 2019)。
- 男性では筋力の違いを反映して、より顕著な隆起と粗造な表面を示します (Murakami et al., 2018)。
- 年齢とともに骨棘形成や石灰化が進行することがあります (Tanaka et al., 2017)。
臨床的意義