大結節稜 Crista tuberculi majoris
大結節稜は上腕骨の近位部に位置する重要な解剖学的構造であり、肩関節の機能と臨床診療において重要な意義を持つ骨性隆起です(Gray, 2020; Standring, 2015)。

J0169 (右上腕骨:前方からの図)

J0364 (上肢帯:右肩と上腕は外転しています(ほぼ90°)、仰向けの手のひらは上向き、腹背方向からのX線像)

J0428 (右側の大胸筋:前面図(半概略))
解剖学的特徴
位置と形態
- 大結節稜は上腕骨の大結節(tuberculum majus)から下方に向かって伸びる稜状の隆起線である
- 結節間溝(sulcus intertubercularis、二頭筋溝)の外側縁を形成し、その外側唇(labium laterale sulci intertubercularis)としても知られる(Moore et al., 2018)
- 近位端は大結節に連続し、遠位端は上腕骨体の前外側面へと移行する
- 長さは約5〜7cmで、上腕骨近位部の約1/3を占める(Netter, 2019)
組織学的特徴
- 表面は粗造で、多数の小孔(栄養孔)と線維性の付着痕が認められる
- 骨膜下には海綿骨質が豊富で、筋の付着に伴う力学的ストレスに適応している(Paulsen and Waschke, 2018)
- 大結節稜の骨密度は周囲の骨体部よりも高く、骨折時の抵抗性に関与する(Osterhoff et al., 2011)
筋肉付着部位と機能解剖
主要付着筋
- 大胸筋(musculus pectoralis major):大結節稜の大部分に付着し、特に鎖骨部と胸肋部の線維が密に付着する(Paulsen and Waschke, 2018)
- 広背筋(musculus latissimus dorsi):大結節稜の中央から下部に付着し、上腕の内転・内旋・伸展に関与する(Drake et al., 2020)
- 大円筋(musculus teres major):大結節稜の内側縁に付着し、広背筋と協調して上腕の内転・内旋を行う(Moore et al., 2018)
付着様式の詳細
- 大胸筋腱は幅広い腱膜として大結節稜に付着し、前方から見ると「Uの字」を逆転させた形態を呈する(Wolfe et al., 1992)