棘下窩 Fossa infraspinata

J0161 (右肩甲骨:後方からの図)

J0162 (右肩甲骨:外側からの図)
定義と位置
棘下窩は肩甲骨後面において肩甲棘の下方に広がる三角形の陥凹領域です(Gray, 2020; Standring, 2020)。肩甲骨の外側縁と内側縁、および肩甲棘下縁によって境界づけられています。
解剖学的特徴
- 肩甲棘の下方に位置し、肩甲骨後面の約3分の2を占める広大な領域です(Moore et al., 2018)。
- 名称は「窩(fossa)」ですが、実際には中心部が膨隆した凸面を呈しており、真の陥凹ではありません(Standring, 2020)。
- 表面は比較的平滑で、内側3分の2は棘下筋の起始部となっています(Gray, 2020)。
- 外側3分の1は棘下筋の筋腹で覆われています(Moore et al., 2018)。
- 窩の表面には数本の斜走する隆線があり、筋線維の付着部となっています(Standring, 2020)。
関連する筋肉
- 棘下筋(Infraspinatus muscle):棘下窩の内側部から起始し、上腕骨大結節の中部に停止します(Moore et al., 2018)。回旋筋腱板(rotator cuff)の一部を構成し、肩関節の外旋と安定化に重要な役割を果たします(Apreleva et al., 2002)。
- 小円筋(Teres minor muscle):棘下窩の外側縁下部から起始し、棘下筋とともに回旋筋腱板を形成します(Gray, 2020)。
- 大円筋(Teres major muscle):肩甲骨下角付近から起始し、棘下窩の下外側縁に近接しています(Standring, 2020)。
血管と神経
- 肩甲上動脈(Suprascapular artery):棘下窩に血液を供給します(Moore et al., 2018)。
- 肩甲回旋動脈(Circumflex scapular artery):棘下窩の外側部を栄養します(Gray, 2020)。
- 肩甲上神経(Suprascapular nerve):棘下筋を支配し、肩甲切痕を通過して棘下窩に達します(Standring, 2020; Cummins et al., 2000)。
臨床的意義
- 回旋筋腱板損傷:棘下筋腱の部分断裂または完全断裂は、回旋筋腱板損傷の中で棘上筋に次いで頻度が高く、肩の外旋筋力低下や疼痛を引き起こします(Yamamoto et al., 2010; Minagawa et al., 2013)。