仙骨管 Canalis sacralis

J0132 (仙骨:上方からの図)

J0133 (仙骨の二対の仙骨孔を通るレベルでの断面図)

J0327 (右側の仙腸関節:前頭断、前面からの後半部分の図)

J0827 (脊椎管内の被鞘と下部脊髄端、背面からの図)
定義と概要
仙骨管(Canalis sacralis)は、脊柱管の末端部分を構成する解剖学的に重要な管状構造である。仙骨椎弓によって形成され、脊髄円錐より下方に続く神経構造および髄膜構造を収容している(Standring, 2020)。この管は、脊柱管の直接的な延長として機能し、中枢神経系と末梢神経系の移行部における重要な解剖学的通路を提供する。
解剖学的構造
1. 形態学的特徴
- 形状:上部では三角形、下部では楕円形を呈する管状構造(Standring, 2020)。上方から下方に向かって徐々に狭小化する。
- 寸法:全長は平均10〜12cm(個人差あり、8〜15cmの範囲)(Cramer and Darby, 2017)。前後径は上端で約8〜10mm、下端で約3〜5mmである。
- 方向:仙骨の生理的後弯に沿って、前下方に向かって走行する(Drake et al., 2019)。
2. 境界と開口部
- 上口(仙骨管上口、Apertura superior canalis sacralis):
- 位置:第5腰椎(L5)と第1仙椎(S1)の間の高さ、仙骨底部に位置する(Moore et al., 2018)。
- 形状:楕円形または三角形を呈し、前方は仙骨底の後面、後方は第1仙椎の椎弓によって囲まれる。
- 臨床的意義:腰椎脊柱管から仙骨管への連続性を示す重要な解剖学的ランドマークである。
- 下口(仙骨裂孔、Hiatus sacralis):
- 位置:仙骨尖部の背側、通常S4〜S5レベルに位置する(Netter, 2019)。
- 形状:逆V字型または逆U字型の開口部で、左右の仙骨角(Cornua sacralia)によって境界される。
- 変異:形状と大きさに顕著な個人差があり、時に完全に閉鎖している場合や、逆に大きく開口している場合がある(Sekiguchi et al., 2004)。
- 臨床的意義:仙骨硬膜外ブロック(カウダルブロック)の穿刺部位として重要である。
- 側方開口部(仙骨孔、Foramina sacralia):
- 前仙骨孔(Foramina sacralia anteriora):4対、仙骨前面に開口し、前枝が通過する。
- 後仙骨孔(Foramina sacralia posteriora):4対、仙骨後面に開口し、後枝が通過する。
- 内容:各仙骨神経の前枝・後枝および付随する血管が通過する(Standring, 2020)。
3. 内壁構造
- 前壁:仙骨椎体の後面によって形成される。平滑で、縦走する静脈叢が存在する。
- 後壁:仙骨椎弓(融合した椎弓板)によって形成される。仙骨正中稜(Crista sacralis mediana)が中央を縦走する。
- 側壁:仙骨の内側面で、4対の仙骨孔が開口する。
内容物
1. 神経構造
- 馬尾(Cauda equina):
- 構成:脊髄円錐(通常L1〜L2椎体レベル)より下方に続く腰神経根(L2〜L5)および仙骨神経根(S1〜S5)、尾骨神経根(Co1)の束(Cramer and Darby, 2017)。
- 配列:神経根は管内を下行し、対応する椎間孔または仙骨孔から外側に向かって走行する。
- 機能:下肢、会陰部、膀胱、直腸への運動・感覚・自律神経支配を担う。
- 臨床的意義:馬尾症候群(Cauda equina syndrome)は、この神経束の圧迫により下肢筋力低下、鞍状感覚障害、膀胱直腸障害を呈する緊急疾患である(Koes et al., 2017)。