仙骨底 Basis ossis sacri

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J0130 (仙骨:前面および下方からの図)

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J0134 (仙骨と尾骨:右側からの図)

解剖学的定義と概要

仙骨底(Basis ossis sacri)は仙骨の上端面(Facies terminalis cranialis)を指し、第1仙椎(S1)の椎体上面を中心として構成される幅広い水平面です。この面は脊柱の最下部に位置し、第5腰椎(L5)の下端面と連結して腰仙関節(lumbosacral junction)を形成します。仙骨底は前方に向かって傾斜しており、その傾斜角度は脊椎骨盤バランスに重要な影響を与えます(Standring, 2020; Moore et al., 2017)。

詳細な解剖学的構造

血管と神経の解剖

仙骨底周囲には重要な血管神経構造が存在します。前面では正中仙骨動静脈(median sacral vessels)が岬角の前面を下行し、外側仙骨動静脈(lateral sacral vessels)が仙骨翼の前面を走行します。仙骨管内には第1仙骨神経根(S1 nerve root)が椎間孔から出て、仙骨神経叢(sacral plexus)の形成に寄与します。特に上関節突起周囲では神経根が骨構造に近接しており、外科的操作時には注意が必要です(Moore et al., 2017)。

生体力学的特性

仙骨底は脊椎骨盤複合体の要となる部位で、体重の約60%を支持します。立位では仙骨底に前方への剪断力と圧縮力が作用し、L5/S1椎間板には体重の数倍の負荷がかかります。仙骨傾斜角(sacral slope)は骨盤入射角(pelvic incidence)、骨盤傾斜角(pelvic tilt)とともに脊椎骨盤アライメントの評価指標となり、正常値は約40度です。この角度の異常は腰椎前弯の増減や腰痛と関連します(Roussouly & Nnadi, 2010)。

臨床的意義