前結節(頚椎の) Tuberculum anterius (Vertebrae cervicalis)
頚椎の前結節は、頚椎に特有の解剖学的構造であり、臨床的に重要な意義を持つ骨性突起です。本項では、その詳細な解剖学的特徴と臨床的意義について包括的に解説します。

J0118 (第4頚椎:頭側からの図)
J0119 (第4頚椎:右側からの図)

J0124 (第七頚椎:頭側からの図)

J0125 (頚椎:前面からの図)
解剖学的特徴
位置と分布
- 前結節は、頚椎の横突起前部に存在する骨性隆起であり、椎体の外側方かつ前方に位置します(Standring, 2021)。
- 第2頚椎(軸椎、axis)から第7頚椎(隆椎、vertebra prominens)まで認められますが、第1頚椎(環椎、atlas)には典型的な前結節は存在しません(Moore et al., 2019)。
- 前結節は横突孔(foramen transversarium)の前方に位置し、この孔を椎骨動脈(vertebral artery)と椎骨静脈叢(vertebral venous plexus)が貫通します(Gray et al., 2020)。
形態学的特徴
- 前結節は頚椎横突起の前要素(anterior element)を構成し、後結節(posterior tubercle)とともに横突起を形成します(Netter, 2023)。
- 前結節と後結節の間には椎骨動脈溝(groove for vertebral artery)が形成され、この溝は横突孔から上方に続く血管の通路となります(Yoganandan et al., 2001)。
- 各頚椎における前結節の大きさと形状は異なり、一般的に下位頚椎(C5-C7)ほど顕著に発達する傾向があります(Bogduk and Mercer, 2000)。
- 特に第6頚椎の前結節は最も大きく発達しており、頚動脈結節(carotid tubercle, Chassaignac's tubercle)と呼ばれ、総頚動脈(common carotid artery)を圧迫する際の臨床的目印として重要です(Gray et al., 2020)。
発生学的起源
- 前結節は発生学的には肋骨の腹側要素(costal element)に相当する構造が、発生過程で椎骨と癒合したものです(Sadler, 2022)。
- この肋骨突起の遺残(vestigial costal process)という発生学的背景により、頚椎の横突起は他の脊椎の横突起とは異なる二重構造(前結節と後結節)を呈します(Moore et al., 2019)。
- 稀に肋骨要素の癒合が不完全な場合、頚肋(cervical rib)として残存することがあり、これは胸郭出口症候群の原因となることがあります(Sanders et al., 2018)。
機能的意義
筋肉付着部としての機能
- 前結節は複数の頚部深層筋の重要な付着部として機能します(Platzer, 2018)。