蝶口蓋切痕 Incisura sphenopalatina

J0056 (右の口蓋骨:内側からの図)

J0057 (右側の口蓋骨:後方からの図)

J0058 (右側の口蓋骨:外側からの図)
解剖学的特徴
蝶口蓋切痕は、口蓋骨の上縁に位置する深い切れ込みで、以下の解剖学的特徴を持ちます(Standring, 2020):
- 口蓋骨の眼窩突起と蝶形骨突起の間に形成される切痕構造
- 蝶形骨体の下面と接することで蝶口蓋孔(翼口蓋孔)を形成
- 切痕の深さは約5-8mm、幅は約3-5mmで個体差がある(Elwany et al., 1999)
- 翼口蓋窩の内側壁に開口し、鼻腔外側壁との重要な連絡路となる
通過構造物
蝶口蓋孔を通過する重要な神経血管構造(Moore et al., 2018):
- 蝶口蓋動脈(顎動脈の終枝):鼻腔粘膜への主要な血液供給源
- 後鼻腔枝:鼻腔後部の粘膜へ分布
- 鼻中隔枝:鼻中隔後部へ分布し、Kiesselbach領域の血管叢を形成
- 翼口蓋神経節の枝(三叉神経第2枝の分枝)
- 後上鼻枝:鼻腔後上部の感覚神経支配
- 鼻口蓋神経:鼻中隔から硬口蓋前部への感覚伝達
臨床的意義
蝶口蓋切痕および蝶口蓋孔は、以下の臨床場面で重要な役割を果たします:
- 鼻出血の治療
- 難治性後鼻出血の主要な出血源(蝶口蓋動脈からの出血)(Douglas and Wormald, 2006)
- 蝶口蓋動脈の内視鏡的クリッピングや電気凝固の際の解剖学的ランドマーク(Fortes et al., 2011)
- 血管塞栓術のターゲット血管として重要
- 疼痛管理
- 翼口蓋神経節ブロックのアプローチ経路(Pipolo et al., 2012)
- 群発頭痛、三叉神経痛、顔面痛の治療に応用
- 経口蓋アプローチまたは経鼻アプローチで神経節に到達
- 鼻副鼻腔手術
- 内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)における重要な解剖学的指標(Stammberger, 1991)
- 上顎洞後壁の処置や翼口蓋窩へのアプローチ時の目印
- 損傷により術後出血や神経障害のリスク
- 腫瘍の進展経路
- 鼻腔・副鼻腔腫瘍が翼口蓋窩へ進展する経路(Madani et al., 2009)
- 頭蓋底腫瘍の鼻腔への進展路
- 画像診断(CTやMRI)での腫瘍進展評価に重要
画像所見
この構造は以下の画像検査で評価できます: