外耳道 Meatus acusticus externus

J0026 (右の側頭骨:外側からの図)

J0284 (右側の顎関節:外側からの図)

J0909 (右の翼突管神経(ヴィディアン神経):右方からの図)

J0912 (右の下顎神経の分岐、浅層)

J0913 (下顎神経の分岐、深層:右方からの図)

J1020 (右の外耳および中耳の概要:前外側からの図)

J1021 (右耳介:外部からの図)

J1022 (右の外耳:内側からの図)

J1027 (右外耳道に垂直な断面:前方からの図)

J1028 (右外耳道の水平断面:上方からの図)

J1029 (右の鼓膜に垂直な断面:前面からの図)

J1030 (右の鼓膜:外側から前下方の図)

J1032 (鼓膜を取り除いた後の右鼓室の耳小骨:外側から前下方からの図)

J1055 (右側の側頭骨を横切った断面で、上部から見た下半分の図)

J1056 (右側の側頭骨を垂直に切断し、外側の切断面を内側からの図)
外耳道は、側頭骨の鼓室部から耳介を通って鼓膜に至る管状の通路です(Gray and Williams, 2023)。解剖学的および臨床的に重要な特徴を以下に示します:
1. 解剖学的特徴
- 構造:外側1/3は軟骨性部分(軟骨外耳道)、内側2/3は骨性部分(骨外耳道)から構成されています(Moore et al., 2021; Standring, 2024)。軟骨部は弾性軟骨から成り、骨部は側頭骨の鼓室部によって形成されています(Drake et al., 2020)
- 形状:外耳道は約2.4cmの長さと約6〜8mmの直径を持ち、前下方に凸の後上方に凸の二重のS字状湾曲(sigmoid curve)を呈しています(Standring, 2024; Netter, 2022)。この湾曲により、外耳道を直視するには耳介を後上方に牽引する必要があります(Gray and Williams, 2023)
- 血管支配:外耳道の血液供給は、外頸動脈の枝である後耳介動脈(posterior auricular artery)と顎動脈(maxillary artery)の分枝である深耳介動脈(deep auricular artery)、および浅側頭動脈(superficial temporal artery)の前耳介枝によって行われています(Netter, 2022; Moore et al., 2021)。静脈還流は後耳介静脈および顎静脈を介して行われます(Standring, 2024)
- 神経支配:外耳道の知覚神経支配は複雑で、主に三叉神経第3枝(下顎神経)の耳介側頭神経(auriculotemporal nerve)が前壁と上壁を、迷走神経の耳介枝(Arnold神経)が後壁と下壁を支配しています(Drake et al., 2020; Gray and Williams, 2023)。また、顔面神経および舌咽神経の小枝も関与しています(Standring, 2024)
- 組織学:軟骨部外耳道の皮膚は比較的厚く、毛嚢、皮脂腺、耳垢腺(ceruminous glands、変性アポクリン汗腺)を含んでいます(Ross and Pawlina, 2023)。一方、骨部の皮膚は非常に薄く、皮下組織を欠き、骨膜に直接付着しています(Moore et al., 2021)。この構造的特徴により、骨部の感染や外傷は強い疼痛を引き起こします(Flint et al., 2021)
- 発生学:外耳道は胎生期の第1鰓溝(first branchial groove)から発達し、鼓膜は第1鰓膜(first branchial membrane)に由来します(Sadler, 2019)。発生異常により先天性外耳道閉鎖症や狭窄症が生じることがあります(Lalwani, 2023)
2. 臨床的意義
- 外耳道骨腫(exostosis):良性の骨性腫瘤で、特に冷水への反復暴露(サーファーズイヤー)との関連が示唆されています(Flint et al., 2021)。好発部位は外耳道の前壁、後壁、前上壁で、通常は両側性かつ多発性です(Roland and Marple, 2022)。進行すると伝音性難聴や耳垢の貯留を引き起こすことがあります(Lalwani, 2023)
- 外耳道炎(otitis externa):急性外耳道炎は主に細菌性感染症で、起因菌として緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が多く見られます(Roland and Marple, 2022)。糖尿病や免疫不全患者では悪性外耳道炎(壊死性外耳道炎)に進展するリスクがあり、側頭骨骨髄炎を引き起こす可能性があります(Flint et al., 2021)。真菌性外耳道炎(otomycosis)は、カンジダ(Candida)やアスペルギルス(Aspergillus)などの真菌が原因で、掻痒感が主症状です(Bluestone and Klein, 2020)
- 外耳道異物(foreign body):特に小児で頻繁に見られ、昆虫、ビーズ、小さな玩具、食物などが挿入されることがあります(Bluestone and Klein, 2020)。生きた昆虫の場合は鉱物油やリドカインで不動化させてから除去します(Lalwani, 2023)。鋭利な異物や深部に嵌入した異物は、鼓膜損傷のリスクがあるため、専門医による除去が必要です(Flint et al., 2021)
- 外耳道真珠腫(keratosis obturans):角化重層扁平上皮が外耳道内で異常に蓄積・増殖し、骨破壊を引き起こすことがあります(Jackler and Schindler, 2021)。中耳真珠腫とは異なり、両側性に発生することが多く、若年成人に好発します(Roland and Marple, 2022)
- 先天性外耳道閉鎖症(congenital aural atresia):外耳道の発生異常で、骨性または膜性の閉鎖により伝音性難聴を引き起こします(Lalwani, 2023)。多くの場合、耳小骨の奇形を伴い、約半数で小耳症(microtia)を合併します(Flint et al., 2021)。治療は外科的再建または骨導補聴器の使用が選択されます(Bluestone and Klein, 2020)
- 外耳道癌(carcinoma of external auditory canal):比較的稀ですが、慢性外耳道炎や放射線照射歴のある患者でリスクが上昇します(Jackler and Schindler, 2021)。扁平上皮癌が最も多く、早期診断が予後に重要です(Flint et al., 2021)
3. 機能的側面
外耳道は聴覚において重要な役割を果たし、音響学的共鳴により2〜5kHzの周波数帯域で約10〜15dBの音圧増幅効果があります(Pickles, 2022)。この周波数帯域は会話音域と一致し、言語コミュニケーションにおいて重要です(Moore, 2021)。
また、外耳道は耳垢(耵聹、cerumen)の分泌により外耳の保護と自浄作用を担っています。耳垢腺は軟骨部外耳道に多く分布し、その分泌物は抗菌特性を持つリゾチームや免疫グロブリンを含んでいます(Ross and Pawlina, 2023)。耳垢のタイプは遺伝的に決定され、ABCC11遺伝子の一塩基多型(SNP)によって乾性(dry type)と湿性(wet type)に分類されます(Yoshiura et al., 2006)。日本人を含む東アジア人の約80〜95%は乾性耳垢(灰白色、鱗屑状)を持つ遺伝的特徴があります(Yoshiura et al., 2006; Prokop-Prigge et al., 2015)。