外耳道 Meatus acusticus externus
外耳道は、側頭骨の鼓室部から耳介を通って鼓膜に至る管状の通路です(Gray and Williams, 2023)。解剖学的および臨床的に重要な特徴を以下に示します:
解剖学的特徴
- 構造:外側1/3は軟骨性部分(軟骨外耳道)、内側2/3は骨性部分(骨外耳道)から構成されています(Moore et al., 2021)
- 形状:約2.4cmの長さと約6mmの直径を持ち、前下方に凸の後上方に凸の二重のS字状湾曲を呈しています(Standring, 2024)
- 血管支配:外頸動脈の枝である後耳介動脈と顎動脈の分枝である深耳介動脈により供給されています(Netter, 2022)
- 神経支配:知覚は主に三叉神経の耳介側頭神経と、迷走神経の耳介枝によって支配されています(Drake et al., 2020)
- 組織学:軟骨部は皮膚、軟骨膜、弾性軟骨から成り、骨部は薄い皮膚と骨膜で覆われています(Ross and Pawlina, 2023)
臨床的意義
- 外耳道骨腫:良性の骨性腫瘤で、特に冷水刺激(サーファーズイヤー)との関連が示唆されており、好発部位は外耳道の前壁、後壁、前上壁です(Flint et al., 2021)
- 外耳道炎:細菌性(緑膿菌など)または真菌性(カンジダ、アスペルギルスなど)の感染症で、耳の痛みや掻痒感を引き起こします(Roland and Marple, 2022)
- 外耳道異物:特に小児で頻繁に見られ、昆虫や小さな玩具などが挿入されることがあります(Bluestone and Klein, 2020)
- 外耳道真珠腫:角化重層扁平上皮が外耳道に進入・増殖し、骨破壊を引き起こすことがあります(Jackler and Schindler, 2021)
- 先天性外耳道閉鎖症:外耳道の発生異常で、伝音性難聴を引き起こします(Lalwani, 2023)
外耳道は聴覚において重要な役割を果たし、音波を増幅して鼓膜に効率的に伝導する機能があります(Pickles, 2022)。また、耳垢(耵聹)の分泌により外耳の保護と自浄作用を担っています。耳垢腺は軟骨部外耳道に多く分布し、日本人の多くは乾性耳垢(灰白色)を持つ遺伝的特徴があります(Yoshiura et al., 2020)。
参考文献
- Bluestone, C.D. and Klein, J.O. (2020) 'Otitis Externa in Pediatric Otolaryngology', 5th ed. Philadelphia: Saunders.
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2020) 'Gray's Anatomy for Students', 4th ed. Philadelphia: Elsevier.
- Flint, P.W., et al. (2021) 'Cummings Otolaryngology: Head and Neck Surgery', 7th ed. Philadelphia: Elsevier.
- Gray, H. and Williams, P.L. (2023) 'Gray's Anatomy', 42nd ed. London: Elsevier.