殿溝 Sulcus glutealis

J0500 (右殿部の筋:外側からの図)

J0501 (右側の殿部の筋:外側からの図)

J0502 (右大腿の筋膜:背面図)
定義と解剖学的位置
殿溝(Gluteal fold, Gluteal sulcus)は、臀部と大腿後面の境界を形成する皮膚の深い横走性のくぼみです。この溝は臀部下端に位置し、臀筋群と脂肪層が作り出すふくらみの下縁を画します(Standring, 2020)。
形成機序
殿溝の形成には以下の解剖学的要素が関与しています:
- 大腿筋膜の横走線維が真皮と固着することで生じる皮膚のくぼみ(Moore et al., 2018)
- 坐骨結節から大転子に至る大腿筋膜中の弓状線維(座索、arcuate fibers)に由来
- 大臀筋の下縁とは必ずしも一致せず、筋の下縁よりもやや上方に位置することが多い(Standring, 2020)
- 皮下脂肪の分布と量によって深さと形状が影響を受ける
機能的解剖
殿溝は単なる解剖学的ランドマークではなく、筋膜と皮膚の機能的相互作用を反映しています:
- 大臀筋が収縮すると、筋膜の緊張が皮膚に伝わり、殿溝がより深く明瞭になります
- 立位や歩行時には、この部位で皮膚と深部組織の間に動的な相互作用が生じます
- 座位では、この部位に体重の一部が加わり、組織の圧迫が生じます(Black et al., 2007)
臨床的意義
殿溝は以下のような臨床的重要性を持ちます:
- **褥瘡の好発部位:**長時間の座位や臥床により、殿溝部分に圧迫性の皮膚損傷(褥瘡)が生じやすい(Black et al., 2007; NPUAP, 2016)
- **膿皮症・毛巣洞:**殿溝部は湿潤しやすく、細菌感染や毛巣洞(pilonidal sinus)の好発部位となります(Karydakis, 1992)
- **美容医学:**臀部形成術や脂肪吸引術において、殿溝の位置と形状は美容的に重要な要素です(Mendieta, 2006)