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生殖器の腹膜嚢は泌尿器と生殖器の一部を包含している。その構造は男女で異なるが、共通しているのは膀胱後壁を覆う腹膜である。内部生殖器の形態と位置の違いに応じて、腹膜嚢の構造も大きく異なる。
図270(男性の膀胱、尿管、精嚢、前立腺、尿道:後方からの図)
男性では、精嚢腺と精管の一部のみが腹膜に覆われている(図270(男性の膀胱、尿管、精嚢、前立腺、尿道:後方からの図) 、図349(前腹壁の下部にあるヒダと窪み) )。精巣は腹膜鞘状突起に位置するが、腹腔から分離して陰嚢内にあるため、腹膜嚢内には存在しない。
女性の卵巣は、位置の変化がより軽度である。卵巣は子宮、腟円蓋、卵管、子宮鼠径索、卵巣提靱帯、卵巣上体、卵巣傍体とともに、前額面上に伸びた大きな腹膜のひだの範囲内にある。このひだは膀胱と直腸の間に位置し、子宮広間膜として既に記載されている(4. 子宮 Uterus. Gebärmutter )。詳細は図275(女性の骨盤内臓器) 、図284(子宮、卵管、卵巣、子宮広間膜、腟上部) 、図285(女性の骨盤内臓器) 、図290(腟、子宮、右卵管) を参照されたい。
子宮広間膜の前葉は子宮体の膀胱面を覆い、子宮頸部に達した後、膀胱底へと移行する。子宮鼠径索はこの前葉に覆われ、腹膜下鼠径輪へと進む。後葉はより下方まで達し、子宮体と子宮頸部から腟円蓋後面に至り、直腸へと移行する。後葉は卵巣と子宮卵巣索を覆う。前後の葉の間には卵巣上体、卵巣傍体、血管、神経が存在する。子宮広間膜の上縁には卵管があり、その腹腔口を通じて女性の腹膜腔は生殖器内腔と連続している。卵管の腹腔端外側で、子宮広間膜は約2cmの自由縁を持つ。
この自由縁の外側端が骨盤壁に固着する部位には、卵巣動静脈を含む低いひだ、すなわち卵巣提靱帯(Plica suspensoria ovarii)が終わる。子宮広間膜は下部の子宮間膜(Mesometrium)と上部の卵管間膜(Mesosalpinx)に区別される。さらに短い卵巣間膜(Mesovarium)も存在する。
子宮広間膜の側方への付着部と、その2枚の膜(前葉と後葉)が分かれる箇所は内腸骨動脈に沿っており、仙腸関節部に位置する。しかし、鋭い自由縁の外側端は大骨盤内で総腸骨動脈に接し、この動脈が内外の腸骨動脈に分枝する場所の上方に位置する。
子宮前壁と膀胱後壁の間には子宮膀胱窩(Excavatio vesicouterina)がある。これは通常狭い隙間状で、腸管係蹄を含まない。子宮と腟円蓋の一方と、直腸との間には矢状方向に強く突出した大きなひだが左右にある。これは平滑筋を含み、直腸子宮ヒダ(Plicae rectouterinae)と呼ばれる(図275(女性の骨盤内臓器) 、図285(女性の骨盤内臓器) )。
これら2つのひだと直腸および子宮の間にあるくぼみを直腸子宮窩(Excavatio rectouterina、ダグラス腔)という。通常は後腟円蓋の高さまでしか達しないが、稀にさらに下方まで及ぶことがある(図275(女性の骨盤内臓器) 、図276(女性骨盤部の正中断面) 、図285(女性の骨盤内臓器) )。
前・後・上方で子宮と結合する腹膜の被覆は子宮周膜(Perimetrium)と呼ばれる(子宮壁の各層 Die Schichten der Gebärmutterwand 参照)。側方では子宮と漿膜の結合はより疎である。ここには結合組織が集まり、子宮に分布する血管、神経の幹がある。この外側部の結合組織は子宮頸部前面にも達し、静脈叢を持ち、子宮傍組織(Parametrium)と呼ばれる。これは前後を子宮広間膜の両葉で覆われている。
男性では直腸膀胱窩(Excavatio rectovesicalis)のみが存在する。その下方境界は図266(男性骨盤の正中断面) 、図270(男性の膀胱、尿管、精嚢、前立腺、尿道:後方からの図) に示されている。膀胱後面には左右の精管膨大部の間に腹膜のない部分がある。男性でも稀に直腸膀胱窩がより下方まで達することがある。