https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
図524(交感神経幹上部・舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経)
[図535] 第2、第3、第4頚神経の知覚線維分布領域(L. Bolk)
横隔神経は主にCIVから出るが、CIIIあるいはCVも1本の細い根を出してこの神経に加わる。横隔神経は主に運動性の線維からなるが、知覚性の線維も含み、後者は心膜、胸膜、腹膜の諸部に至る。また、この神経は若干の小枝を鎖骨下動脈神経叢に送る。
横隔神経は前斜角筋の前面を下方かつ内側に走り、鎖骨下動脈の前に達する。そして鎖骨下動静脈の間を通り、胸鎖関節の後ろで胸腔に入る。胸腔に入る際、多くの場合、内胸動脈の内側面に接している。次いで心膜横隔動静脈とともに胸膜頂の前面を通過してその内側面に至り、そこから肺根の前方を通り、心膜と壁側胸膜の心膜部との間を下方かつ後方に走って横隔膜の上面に達する。そこで本幹に対して多くは直角に放散する終枝に分かれる。右の横隔神経からは1本の小枝が下大静脈に達する。
左右の横隔神経の経路は全く同じではない。左側は心尖の後方を回って曲がり、前方に凹の弓を描いて横隔膜に達する。一方、右側は右腕頭静脈の外側面に、次いで上大静脈の外側面に接して走り、大静脈孔のやや前方かつ外側で横隔膜に達する。左側は右側よりも約1/7長い経過をとる。横隔膜に入る位置は、右の横隔神経ではより後方で内側にあり、左側はより前方かつ外側にある(図223(胸腔の内臓の位置 I))。
胸腔内では、横隔神経は細い心膜枝Ramus pericardiacusを心膜の前面に与える。また、少数の細い枝が一定の間隔で胸膜頂と壁側胸膜の縦隔部に送られる。
この神経の太い終枝である横隔枝Rami phreniciは、全ての部分が運動性というわけではない。右の横隔神経は前方と後方の終枝に分かれ、左横隔神経は前方、後方、および外側の終枝に分かれる。
後方の終枝は左右とも1本の腹枝Ramus abdominalisを横隔膜の下面に送る(右側では横隔膜の大静脈孔を通り、左側では横隔膜腰椎部の1つの尖頭あるいは食道孔を通る)。この終枝は両側で交感神経の枝と合流して、神経細胞を含む横隔神経叢Plexus phrenicusを形成する。詳細は交感神経の項を参照されたい。
上述の交感神経との下方の結合のほかに上方の結合もある。これは頚部下部において、交感神経の下頚神経節あるいは第1胸神経節から、時には中頚神経節からも細い1本の小枝が出て横隔神経に達している。
前述のCIIIから出る横隔神経の細い根が舌下神経係蹄の中をある距離だけ走ることがあり、その根が出てくる箇所は舌下神経の1枝のように見える。また横隔神経はしばしば鎖骨下筋神経から、あるいは直接に下部の頚神経の1つからの枝を1本受け取る。この枝は近年、Nebenphrenicus(副横隔神経)と名付けられている。副横隔神経は様々な経過をたどった後、多くの場合、第1肋骨の高さ(すなわち肺門より上方)で、CIVから起こるHauptphrenicus(主横隔神経)に達する。肺門より下方で合流することは極めてまれである。W. FelixはNebenphrenicus(副横隔神経)を20%に見出したが、E. Ruhemann(Verh. anat. Ges., 1924)は全例の半数以上に認めている。