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図538(腕神経叢の模型図)、539(腕神経叢の別の模型図)
図547(右上肢の皮神経分布領域)、548(右上肢の皮神経分布領域)
腕神経叢の形成には第5~第8頚神経(C V~C VIII)の前枝Rami ventralesが全て関与し、第4頚神経(C IV)は1本の小枝を、第1胸神経(Th I)はその大部分が加わる。しばしば第2胸神経(Th II)も細い1根をこの神経叢に送る。さらに、腋窩において第2胸神経の外側皮枝Ramus cutaneus lateralisとの結合が(肋間上腕神経N. intercostobrachialisとして)常に存在する。
第1胸神経は、それ以下の胸神経と同様に後枝Ramus dorsalisを椎体の側方から後方へ、それに属する肋間隙を通して送る。一方、その前枝Ramus ventralisは直ちに大きさの異なる2枝、すなわち細い肋間神経と太い上腕枝Ramus brachialisに分かれる。後者は腕神経叢の下方の根を形成し、即座に第1肋骨を越えて上方へ向かう。
腕神経叢は、このように太さの異なる5~6個の**(腕)神経叢根**Radices plexus(brachialis)から構成される。これらの根の太さは第5頚神経(CV)から第7頚神経(CVII)まで増大し、その後再び減少する。
この神経叢の諸根は前後の肋横突間筋Mm. intercostotransversarii ventrales et dorsales(後者はMm. intertransversarii posteriores, B. N. A.)の間を通り、斜角筋裂に現れる。ここを出る際、中斜角筋の起始はこれらの根の後方に、前斜角筋の起始は前方に位置する(図537(腕神経叢) 、図541(右腋窩の神経))。上方の3つの根は下行性、第4の根は水平、第5(および第6)の根は上行性の経路をとる。これらすべての根が鋭角をなして互いに結合し、それによって腕神経叢の初期構造Anfangが形成され、さらにその根索の配列が変化して神経叢が完成する。そのため、腕神経叢は全体として一つの大きな縦の広がりを持ち、斜角筋裂から上腕骨頭まで約15~20cm延びている。
この神経叢は斜めに下行し、その神経束は遠位部で集束する。鎖骨がこの神経叢と交差するため、鎖骨上窩にある鎖骨上部Pars supraclavicularisと腋窩にある鎖骨下部Pars infraclavicularisとに区別される。
鎖骨上部Pars supraclavicularisは胸鎖乳突筋の下部外側の後方に位置し、肩甲舌骨筋の下腹と交差する。この神経叢の上部3根は鎖骨下動脈より上方にあるが、下部の2根または3根はこの動脈の背側に位置する。頚横動脈はこの神経叢の束間を通過するか、あるいはこれらの前方を通過する。
鎖骨下部Pars infraclavicularisは小胸筋と大胸筋に覆われている。その終末部は肩甲下筋と外側鋸筋の間に埋没している。腋窩動脈はこの神経叢の前面から正中神経の2根が形成する裂隙を通過し、正中神経のフォーク状の部分に囲まれて、この神経の背側に到達する。
[図536] 頚部の神経と血管(深層)
[図537] 腕神経叢(HirschfeldとLeveillé による)
[図538] 腕神経叢の模型図
C5~C8は第5~第8頚神経(前枝)、D1は第1胸神経の前枝を示す。I は上神経幹、II は中神経幹、III は下神経幹を表し、各々が1本の前枝(a1, a2, a3)と1本の後枝(p1, p2, p3)を出す。a1とa2が合わさって外側の第2次幹である橈側神経束1を形成し、a3は内側の第2次幹である尺側神経束となる。後方の3枝が合流する部分から、後方の第2次幹である背側神経束2が生じる。
[図539] 腕神経叢の別の模型図
V~Iは第5~第8頚神経と第1胸神経の前枝を示す。背側神経束(r)を形成する線維束は点描で表現されている。r は橈骨神経、mc は筋皮神経、m は正中神経、u は尺骨神経を表す。
叢形成の様式 Bildungsweise des Plexus
a) 腕神経叢と他との結合 Verbindungen des Plexus brachialis mit anderen Strukturen