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片山正輝

目次(V. 神経系)

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図477(ヒトの大脳皮質の構造)

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図478(大脳皮質の細胞の形)、479(中心前域と中心後域の細胞層)

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図480(中心前域におけるベッツ巨大錐体細胞)、481(後頭葉の細胞層)、482(鳥距溝とその付近の大脳皮質の断面)

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図483(有線領(鳥距型)の8細胞層)、484(海馬足の模型図)、485(嗅球を通る横断面)、486(嗅球と嗅索の構造を示す模型図)

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図487(脳の横断面における交連線維と遠皮質性線維の配列(模式図))、488( 脳の縦断面における前頭葉と後頭葉間の連合神経線維(模式図))

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図489(大脳皮質における神経突起の起始と終末)

白質から灰白質の皮質内に神経線維束が入り込み、この線維束は髄放線(Markstrahlen)あるいは放線束(radiäre Bündel)と呼ばれる。この線維束は皮質の外方縁に進むにつれて次第に細くなり、皮質表面に近い層では束としては存在しなくなる。そのため、皮質は外方の主層(äußere Hauptschicht)と内方の主層(innere Hauptschicht)に区別できる。両者の境界は髄放線が認められなくなる位置である。ただし、外方の主層にも放射状に走る線維は存在するが、これらは束を形成していない。

髄放線に対して横方向、すなわち皮質の表面に平行して、多数の神経線維が走っている。これらの線維は様々な方向に走り、互いに交差する。その量は外方の主層では少なく、内方の主層では豊富である。内方の主層の範囲では、これらの線維を放線間網工(interradiäres Flechtwerk)と呼び、外方の主層内では放線上網工(superradiäres Flechtwerk)と呼ぶ。これらの切線線維(Tangentialfasern)の比較的密な集まりが3箇所に見られる。これが皮質白層(Strata alba corticis)であり、第I層、第IV層、第V層に存在する。第I層内では外切線線維(äußere Tangentialfasern)と呼ばれる。第IV層と第V層にある比較的密な条はそれぞれ外および内バイアルジェ線条(äußerer und innerer Baillargerscher Streifen)と呼ばれる。このうち外バイアルジェ線条はジェンナリ線条(Gennarischer Streifen)としても知られており、有線領(Area striata、図480(中心前域におけるベッツ巨大錐体細胞)、481(後頭葉の細胞層)、482(鳥距溝とその付近の大脳皮質の断面))で特に明瞭に観察される。

大脳皮質の神経細胞は、その形状から錐体細胞(Pyramidenzellen)と呼ばれ、上述の多数の神経線維束や叢の間に位置している。皮質の神経細胞の大きさは多様だが、その形状はある程度一定しており、密集して、あるいは比較的疎らに分布している。灰白質の各層内では、同種の細胞形態のものが一定のパターンで配列しているため、表面に平行な層構造が形成される。

層構造は大脳皮質の部位によって異なるが、6層構造の基本型(sechsschichtiger Grundtypus、Brodmann)に帰着させることができる。

この基本型を観察してみよう。軟膜のすぐ下にある最外層は神経細胞に乏しくグリアが豊富で、I. 表在層(Lamina zonalis、Molekularschicht)と呼ばれ、外切線線維を含む。これに続く小型錐体細胞の集まる層はII. 外顆粒層(Lamina granularis externa、Äußere Körnerschicht)である。次に中型錐体細胞の層があり、III. 外錐体層(Lamina pyramidalis [externa]、Pyramidenschicht)と呼ばれる。ジェンナリ条(Gennarischer Streifen)のある部分はIV. 内顆粒層(Lamina granularis interna、innere Körnerschicht)と呼ばれ、小型錐体細胞が集まった層である。これに続いて髄放線の範囲にV. 内錐体層(神経細胞層)(Lamina pyramidalis interna [Lamina ganglionaris]、Schicht der tiefen großen Pyramidenzellen)とVI. 多形細胞層(Lamina multiformis、Schicht der polymorphen Zellen)がある。

大脳皮質で最も特徴的な細胞成分は錐体細胞(Pyramidenzellen)である。その大きさは多様で、最小のものは底面直径7µm、最大のもの(中心前回の巨大錐体細胞)は底面直径が40~80µmに達する。錐体細胞は3つ以上の側面と、髄質に向かう1つの底面、および長く伸びた先端(尖端突起または主突起、Spitzen- oder Hauptfortsatz)を持ち、これは脳表面に向かって走行する。尖端突起は側方に細い枝を出し、幅が狭くなり、その終端は細い枝に分かれる。底面の角からは同様に分枝する3~5本の突起、すなわち側方底突起(seitliche Basalfortsätze)が出る。一方、底面中央からは1本の神経突起、すなわち中央底突起(mittlerer Basalfortsatz)が出る。これは放射方向に進み、髄質稜に達する神経線維の軸索となるが、他の突起は樹状突起である。神経突起は多数の側枝を出しながら髄質に向かって走る。多くの神経突起は髄質の近くでそれぞれ1本の水平方向の枝と下行性の下枝に分かれる。錐体細胞の核は楕円形に近く、明瞭な1個の核小体を有する。その細胞体は、特に比較的大型の細胞では黄色を帯びた色素を含んでいる。

外切線線維層には主に切線方向に走る多数の神経線維と、カハール細胞(Cajalsche Zellen)という特殊な細胞が存在する。カハール細胞は不規則な形状の多極細胞で、その長い突起が切線線維の方向に伸びている(図478(大脳皮質の細胞の形)、479(中心前域と中心後域の細胞層)、2)。この細胞は2本以上の神経突起を有する。また、この層には深部の層にある小型錐体細胞の突起も到達している。第三に、髄質層から有髄性の太い神経線維(図478(大脳皮質の細胞の形)、479(中心前域と中心後域の細胞層) 、6)が伸び、途中で分枝しながら切線線維層内でさらに枝分かれする。これらの線維は遠方の細胞に由来するため、遠方線維(Fern-Fasern)と呼ばれる。第四に、内側の主層に属する錐体細胞の突起が皮質の最表層で密な終末分枝を形成し、第1層内に広がっている。

これに続く多形細胞層には、三角形および短い錐体形の多数の細胞が存在する。これらの細胞は突起の数が少ないが、その性質は上述のものと類似している。同層にはさらに多数の軸索分枝細胞(図478(大脳皮質の細胞の形)、479(中心前域と中心後域の細胞層)、8)が存在し、この細胞は他のすべての層にも分布している。

放線上網工、放線間網工、およびジェンナリ条を特定の細胞と関連付けると、放線上網工に含まれる有髄線維は遠方の細胞に由来していると考えられる。その起源の距離は様々である。ジェンナリ条は主に錐体細胞の神経突起の側枝から構成されているようだ。放線間網工についても同様だが、ここでは軸索分枝細胞の神経突起の枝も重要な役割を果たしている。

大脳皮質のグリア(第I巻、RK134(短突起細胞)、135(長突起細胞)RK136(稀突起膠細胞))については、中枢性のグリア(神経膠)zentrale Neurogliaに記載したグリア細胞のあらゆる形態が存在する。しかし、その細胞の分布と数は灰白質と白質で異なる。灰白質内(および線条体内)では、長突起細胞はほとんど存在せず、表在層と白質に隣接する皮質深層にわずかに散在するのみである。短突起細胞はかなりの量で存在する。稀突起グリア(Oligodendrogliazellen)とオルテガ細胞(Hortegazellen)は主に神経細胞と血管の近傍に位置する。白質内では長突起細胞が数的に優勢で、短突起細胞はまれにしか見られない。稀突起グリアは白質に豊富に存在し、しばしば血管に沿って配列している。オルテガ細胞は灰白質よりも数が少なく、不規則に分布している。

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RK134(短突起細胞)、135(長突起細胞)

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RK136(稀突起膠細胞)

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[図477]ヒトの大脳皮質の構造(Brodmannによる模式図)