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目次(IV. 内臓学)

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喉頭腔は粘膜の存在により、骨組みのみで形成される空間とは形状と広がりが本質的に異なる。全体的に見ると、喉頭腔は上方から中央部にかけて漏斗状に狭まり、中央部から下方で再び広がっている(図198(喉頭の前半部:前額断面で後半部を除去))。

前頭断では砂時計の形をしている。上方と下方の狭くなった部分の間には喉頭室Ventriculus laryngis(図194(男性の喉頭)図198(喉頭の前半部:前額断面で後半部を除去)図201(声帯ヒダと室ヒダの横断面))という空所が横方向に広がっている。そのため、喉頭腔は上部、中部、下部の3つに分けられる。

上部は喉頭前庭Vestibulum laryngis, Vorhofと呼ばれ、前方が広く後方が狭い不規則な四辺形の喉頭口Aditus laryngisで始まる。喉頭蓋と披裂喉頭蓋ヒダに囲まれている(図087(咽頭腔))。小角結節楔状結節披裂間切痕については粘膜の箇所ですでに説明した(2. 披裂喉頭蓋ヒダ Plica aryepiglottica 参照)。

喉頭前庭の前壁は喉頭蓋の後面のみから成り、長さ4.5cmである。下方1/3で前壁面が横方向に隆起し、多くの場合低いが、時に強く突出する1本の縦走する隆起ができる。これを喉頭蓋結節Tuberculum epiglottidis(図194(男性の喉頭))という。前庭の後壁の形状は披裂軟骨の位置に依存する。披裂軟骨が接近すると後壁は隙間状になり、離れると平坦で低くなる。前庭の側壁は不正四辺形で、下方は縮小して室ヒダに移行し、これが前庭と喉頭腔中部の境界となる(図194(男性の喉頭)図198(喉頭の前半部:前額断面で後半部を除去))。

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図087(咽頭腔)

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図194(男性の喉頭)

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図198(喉頭の前半部:前額断面で後半部を除去)

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図201(声帯ヒダと室ヒダの横断面)

喉頭腔の中部は室ヒダによって前庭から、声帯ヒダによって喉頭腔下部から区切られる。中部は矢状方向の隙間で、大きさは可変的である。室ヒダは前方で鋭角を成して接近し、後方は軽い凹みを描いて離れる。左右の室ヒダ間の隙間を前庭裂Rima vestibuliといい、変化に富む。一方、左右の声帯ヒダと筋突起の内側縁、および披裂軟骨により境される矢状方向の裂隙が声門裂Rima glottidis, Stimmritzeで、その形状と大きさは可変的である。声帯ヒダは発声器官で、甲状軟骨での起始から後方に向かって徐々に離開し、やや上方に進む。声門裂の前部、声帯突起までを膜間部Pars intermembranaceaといい、後方の短い部分を軟骨間部Pars intercartilagineaという。

声門Glottisは発声を担う喉頭部分で、左右の声帯ヒダから構成される。

室ヒダと声帯ヒダの間には左右各側に喉頭室への入口がある。喉頭室は外側上方に広がり、袋小路状に終わる空所で、粘膜に完全に囲まれ、横断面で約1cmの高さがある。喉頭室は喉頭室付属Appendix ventriculi laryngisを伴い、喉頭前庭の外側でしばしば上方に伸びる。

多くのサルではこの空所が顕著に発達し、鎖骨付近まで伸びて音響嚢Schallsäckeを形成することがある。

喉頭腔の下部は最も単純な構造を持つ。円錐形で、下方が広がって気管の内腔に連続する。

声門裂は、ほぼ完全に閉じた状態では狭長な隙間で、中央部がやや広い。

軽度に開いた状態、例えば静かな呼吸時には、前方が鋭角で左右の披裂軟骨間を底辺とする細長い三角形に似る。完全に開くと、後方の角を落とした細長い菱形となる。後方の2辺は披裂軟骨の内側縁で形成される。声門裂は喉頭腔の最狭部である。その長さは男性で2.0~2.4cm、静かな呼吸時の最広部で幅0.5cmだが、1.4cmまで拡張可能である。女性と子供ではこれらの数値が約1/5小さい。声帯ヒダ自体の長さは男性で約1.5cm、女性で約1.2cmである。

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[図201]声帯ヒダと室ヒダの横断面

声帯ヒダの自由縁において、✶印から✶印までの領域が重層扁平上皮で覆われている。