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図619(子供の眼の脈絡膜と虹彩の血管)、620(1個の毛様体突起を長軸に対して直角に切断した断面図)
図621(瞳孔括約筋と散大筋:ウマの虹彩を漂白し、放射状に切断したもの)、622(瞳孔括約筋(s)と瞳孔散大筋(D)の関係を示す模式図)
図623(ヒトの角膜、虹彩、および毛様体)、624(ヒトの虹彩後面近くの層の一部)
基本構造
色調と特徴
構造的層
血管と神経支配
虹彩は眼球中膜の前方部分で、前額面上にある眼房内に露出した円板である。その中央には円い孔があり、これを瞳孔(Pupilla, Sehloch)という。光線はこの孔を通って眼内に達する。瞳孔は虹彩の中央よりやや内側に位置する。生体の眼では瞳孔の直径は3~6mmで、その大きさは入射光線、眼の調節状態、その他の要因により変化する。瞳孔は角膜の後方、水晶体の前にあり、角膜と水晶体の間の空間を大きい前方部と小さい後方部に分ける。これらをそれぞれ前眼房と後眼房という。虹彩の瞳孔に近い部分は水晶体の前面に直接接しているため(この接触範囲は個体差がある)、両眼房は互いに分離している(図605(右眼球の断面図))。
虹彩には前面(Facies anterior)と後面(Facies posterior)があり、さらに自由縁と固定縁がある。固定縁は毛様体に付着しているため毛様体縁(Margo ciliaris, Iriswurzel:虹彩の根の意)とも呼ばれる。この縁は虹彩角膜角(589頁)によって強膜角膜縁に接続している。自由縁は瞳孔縁(Margo pupillaris)と呼ばれ、死体の眼では固定縁から4~5mm離れている。この距離が虹彩という円盤の幅となる。虹彩全体の直径は10~12mmである。前面は内方の細い帯と外方の広い帯に分かれ、それぞれ小虹彩輪(Anulus iridis minor, Zona pupillaris)と大虹彩輪(Anulus iridis major, Zona ciliaris)と呼ばれる。両帯を貫いて多数の放射状の筋が走っている。瞳孔が開大しているときには大虹彩輪内に不完全な輪状の溝と隆起が生じ、これを虹彩襞(Rugae iridis)という。
虹彩の厚さは中程度の収縮時に約0.4mmである。虹彩の色は個体によって多様性に富む。金髪の人では青または灰色が一般的で、時に緑を帯びることもある。褐色または黒色の頭髪の人は虹彩も多くの場合暗い色調で、褐色ないし黒褐色を呈し、虹彩全体が一様な色のこともあれば、霜降り状になっていることもある。(小口昌美(日本医科大学雑誌、8巻3号、1937)によれば、日本人の虹彩の色は乳児期には黒褐色が最も多く、幼児期には濃褐色、学童期から壮年期まで褐色、老年期には褐色および淡褐色が最も多いという。)青い虹彩では虹彩の結合組織層に色素がないが、後面の色素はどの場合にも存在する。褐色の虹彩では結合組織性の虹彩支質に、程度の差はあれ色素がかなり強く沈着している。白子の虹彩は完全に色素を欠き、多数の血管のために虹彩が赤く見え、光線を遮る隔膜としての虹彩の機能をごくわずかしか果たせない。