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片山正輝

目次(I.骨格系)

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基本構造

主要な縫合

特殊な構造

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RK262(頭蓋:45歳男性の上面図)

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RK274(頭蓋45歳男性、側面図)

下顎骨・鼓室小骨・舌骨を除くすべての頭蓋骨は、縫合、軟骨結合、または骨結合のいずれかによって相互に結合している。縫合は網のように頭蓋の内外両面に広がっているが、内面の網が外面のそれとすべての場所で一致しているわけではない。骨と骨を結合する「接着剤」は、縫合においては結合組織であり、軟骨結合においては軟骨である。

縫合で結合される骨の縁はさまざまな形状を呈し、直線的なものや蛇行しているものがあり、その程度も多様である。これらの走行パターンはそれぞれの縫合に特有だが、大きな個体差も見られ、特にいわゆる「鋸状縫合」(Zackennähte)で顕著である。鋸状縫合は多数の鋸歯状の凹凸を持つこともあれば、かなり直線的な走行を示すこともある。そのため、「鋸歯の少ない縫合」と「鋸歯の多い縫合」("zackennarme und zackenreiche Nähte")が区別される。

頭蓋冠(RK262(頭蓋:45歳男性の上面図)RK274(頭蓋45歳男性、側面図) )にはほぼ平行する2本の縫合が前後にある。これが冠状縫合(Sutura coronaria、Kranznaht)と人字縫合(Sutura lambdoides、Lambdanaht)である。冠状縫合の中央と人字縫合の頂点は矢状縫合(Sutura sagittalis、Pfeilnaht)によって結ばれている。矢状縫合は胎児や子供では前頭縫合によりさらに前方まで伸びているが、前頭縫合は後に骨化して、たいてい完全に消失する(β) 前頭骨 Os frontale, Stirnbein参照)。

冠状および人字縫合はそれぞれ下端で、矢状縫合にほぼ平行しながら上下に蛇行する1本の長い縫合と合している(RK274(頭蓋45歳男性、側面図) )。この縫合の形成には、上方で前頭骨と頭頂骨、下方で頬骨・蝶形骨の大翼・側頭骨の鱗部および乳突部が関与している。すなわちこの縫合は頬骨前頭縫合(Sutura zygomaticofrontalis)から始まり、蝶骨前頭縫合(Sutura sphenofrontalis)および蝶骨頭頂縫合(Sutura sphenoparietalis)となって上方に凸のカーブを描きながら蝶形骨大翼の上縁に沿って伸び、次いで頭頂側頭縫合(Sutura parietotemporalis)となって、さらに強く上方に凸出した長い第2のカーブを描いて後下方へ走り、最後に頭頂乳突縫合(Sutura parietomastoidea)となって後方へ走る。

頭蓋の側壁を矢状方向に走るこの縫合は、上方からは冠状および人字縫合を受ける一方、下方へは次の3つの縫合を送り出している。

  1. 蝶骨頬骨縫合(Sutura sphenozygomatica)は下眼窩裂の丸みを帯びた外側端に終わっているが、翼口蓋窩の中にまで続いて、この窩の下端から、蝶形骨の翼状突起と口蓋骨の錐体突起の間の縫合を派生させている。