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(RK236(前頭骨:前頭面) 、RK237(前頭骨の大脳面) 、RK238(前頭骨の眼窩面) )
前頭骨は頭蓋の前方部を形成し、上方に伸びた円蓋状の前頭鱗Squama frontalis、眼窩の天井を構成する2つの水平な眼窩部Partes orbitales、そして両眼窩部の間にある鼻部Pars nasalisから成る。
前頭鱗は前頭面Facies frontalis、側方の小さな側頭面、そして内側の大脳面Facies cerebralisに区分される。
額の両側に前頭結節Tubera frontalia, Stirnhöckerが突出している。この隆起は浅い溝によって、弓状の隆起である眉弓Arcus superciliaris, Augenbrauenbogenと分けられる。左右の眉弓の間には比較的平坦な部分があり、これを眉間Glabella, Stirnglatzeという。眼窩の縁は眼窩縁Margo orbitalisと呼ばれ、外側が最も鋭く突出している。眼窩縁の内側3分の1付近に切痕または溝があり、これを外側前頭切痕(孔)Incisura frontalis lateralis (Foramen frontale laterale)という。その内側には内側前頭切痕Incisura frontalis medialisという溝がある。これは時に内側前頭孔Foramen frontale medialeという孔になることがある。眼窩縁は外側で太く堅固な突起となって伸びており、頬骨と結合するため頬骨突起Processus zygomaticus, Jochfortsatzと呼ばれる。
頬骨突起の外側部から側頭線Linea temporalisが始まり、上後方へ弓状に走って二叉に分かれ、頭頂骨へと続いている。
前頭部の大脳面Facies cerebralisは凹面をなし、脳回圧痕や脳隆起が見られる。その上部中央には矢状溝Sulcus sagittalisという溝が走る。その左右両縁は下方で1本になって稜線となって高まり、これを前頭稜Crista frontalisという。前頭稜は篩骨切痕の近くまで達するが、ここで2つの小さい接合面に席を譲る。この面は篩骨の翼突起と接し、これとともに盲孔Foramen caecumを囲む。ただし、盲孔が完全に前頭骨だけでできていることもある。盲孔は導出静脈の通る孔ではなく、硬膜の1突起を容れるものだが、前頭骨の鼻棘Spina nasalis ossis frontalis(後述)付近まで伸びて、そこで行き詰まる。矢状溝の傍らには脳膜顆粒小窩があり、さらに動静脈溝も存在する。前頭骨の後縁はギザギザしており、左右の頭頂骨との結合面をなすため頭頂縁Margo parietalisと名づけられている。頭頂縁は外側で眼窩部の蝶形[骨]縁Margo sphenoideusに一続きに移行する。
眼窩部はほぼ三角形である。内側縁と後縁は直線をなし、外側縁は弓なりに曲がって、いずれも前から後ろへ走っている。
眼窩面Facies orbitalisは凹面をなし、頬骨突起のすぐそばに涙腺の眼窩部を容れる涙腺窩Fossa glandulae lacrimalisというくぼみがある。眼窩面の前内側部には、小さいくぼみないし凹凸、あるいは小窩の脇に小さい棘があり、これを滑車小窩Foveola trachlearisおよび滑車棘Spina trochlearisという。滑車棘は上斜筋の滑車が付着する場所である。眼窩部の大脳面は円く高まっており、脳隆起と脳回圧痕が強く現れている。前面および外側へは明確な境なしに前頭鱗の大脳面に移行する。ギザギザした後縁は蝶形縁Margo sphenoideusと呼ばれ、蝶形骨の大小両翼が付着する。左右の内側縁はその前方にある鼻部とともに篩骨切痕Incisura ethmoidea, Siebbeinausschnittを成し、ここに篩板がはまり込む。鼻部は前方に1本の棘のような突起が出ており、これを前頭骨の鼻棘Spina nasalis ossis frontalis, Nasenfortsatzという。鼻棘は重複していることもある。その前面はざらざらしており、鼻骨と上顎骨の前頭突起の一部がここに接する。
鼻棘の後面には篩骨の正中板の前縁が支えられているが、時に篩骨洞の前方のものもここに付着する。鼻棘の上を覆って鼻縁Margo nasalisというギザギザした半月形の面があり、ここに鼻骨の上端と上顎骨の前頭突起の上端が接する。この上顎骨の付着する箇所の後ろで鼻部の面は深く落ち込んでおり、多少とも顕著な空所がそこにある。これが前頭洞Sinus fronalisで、前頭洞口Apertura sinus fronalisによって鼻腔に開口する。
左右の前頭洞は、前頭洞中隔Septum sinuum fronaliumという、多くの場合薄い隔壁で分けられており、その形と広さは同一の頭蓋においてすらもかなり異なる。この中隔はどちらか1側へ押しやられていることも、斜めになっていることもあるが、その下端部は常に正中線上にある。
さらに後方の前頭骨の部分は、くぼみの多い、小室に分かれた様相を示しており、それが前頭洞の入口に近づくほど顕著になる。そのため、前頭洞そのものがこのような小室の大きくなったものとみなされる。
前頭洞と関係している他の骨については、まず左右の篩骨迷路を挙げねばならない。篩骨迷路の天井は眼窩部の内側部で作られている。次には篩骨の眼窩板(紙様板)と上顎骨の前頭突起との間にはさまれている涙骨が挙げられる。眼窩板と結合している部分には各篩骨洞の頂の部分を成す篩骨小窩Foveolae ethmoideaeが並んでいる。なおここには2つの切痕があり、眼窩板の接着によってそれぞれ孔になっている。
すなわち前の大きい方の切痕は眼窩頭蓋管Canalis orbitocranialisとなり、後ろの小さい方の切痕は眼窩篩骨管Canalis orbitoethmoideusとなる。あるいはこれら両管が、前頭骨だけ、またはさらにまれに眼窩板だけによって形成されていることもある。
縫合の痕跡が鼻縁から正中線上を上方へ伸びていることがある(RK273(頭蓋(45歳男性)前面観) )。これはこの骨が左右の両側半から生じたことを示すものである。前頭縫合Sutura frontalisがいつまでも存続する例も少ない。
前頭洞の大きさは非常にまちまちである。小さくて、エンドウ豆ほどの大きさのものがある一方で、非常によく発達して前頭鱗や眼窩部にまで伸びているものもある。眼窩部へ伸びている場合、それが異常に発達している例では蝶形骨の小翼、さらには大翼の中にまで達することがある。こうなると前頭洞が眼窩の上壁全体と側壁の一部にわたって位置を占めることになる。
[図236]前頭骨:前頭面(4/5倍)
[図237]前頭骨の大脳面(4/5)
[図238]前頭骨の眼窩面(4/5)