https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
図662(左眼窩の眼瞼板、上眼瞼挙筋腱、上下斜筋を前方から剖出した図)
涙腺は上眼瞼挙筋の広がった腱によって、大きさの異なる次の2部に不完全に分かれている:
a) より大きく密集した上部—これを眼窩部Pars orbitalis という。
b) ゆるく結合した小葉からなる下部—眼瞼部Pars palpebralis、これは結膜円蓋の上に直接接している(図662(左眼窩の眼瞼板、上眼瞼挙筋腱、上下斜筋を前方から剖出した図))。
眼窩部(上涙腺)には凸の上面と凹の下面のほか、前縁と後縁がある。前縁は眼窩口縁に沿い、後縁は眼窩の奥行きの前部1/4に達している。矢状方向より横方向に長く、前後12mm、左右20mmである。
眼瞼部(下涙腺)は比較的ゆるく集まった小葉を持つ。これらの小葉は結膜円蓋の外側部の上にあり、外眼角まで伸びている。上涙腺が眼窩の上縁の後ろに隠れているのに対し、下涙腺は眼窩口縁の下に露出している。下涙腺は上眼瞼板の上縁に平行し、4〜5mmの距離で離れている。
上涙腺には排出管Ductuli excretoriiと呼ばれる導管が3〜5本ある。これらの導管は下涙腺の小葉の間を走って結膜円蓋に達し、眼瞼板の縁から4〜5mm離れたところで、互いに不定な間隔を保って開口する。最も外側にある排出管が最大の口径(0.45mm)を持ち、外眼角を通る矢状面上にある。上涙腺の導管は下涙腺を通過する際、後者の小葉からの管を多数受け入れる。しかし下涙腺にはさらに独自の導管が3〜9本あり、これらは不規則ながら、特に上涙腺の導管の内側に配置されている。
涙腺に属するものとしてさらに副涙腺Glandulae lacrimales accessoriaeと管状瞼板腺Glandulae tarseae tubulosaeがある。これらは上述の涙腺と発生起源を共にするだけでなく、構造も同じである。両者については既にa) 涙腺 Glandula lacrimalis, Tränendrüse に記した。
涙腺の微細構造は耳下腺のそれとよく似ている(図659(ヒトの涙腺の切片))。涙腺は複合管状腺に属し、その導管は2層の円柱上皮で覆われている。導管は長い介在部Schaltstückに続く。これは背の低い上皮で覆われた細い管である。介在部の先に分泌を行う終末部がある。これは漿液性の腺細胞からなる厚い壁に囲まれている。腺細胞は顆粒を持つ円柱状で、長時間分泌を続けると縮小し、より顆粒状になって濁り、境界が不明瞭になる。基底膜には核を含む星状の肥厚部があり、互いに吻合して「かご状の骨組み(Korbgerüst)」を形成する。かごの目は基底膜の薄い部分で完全に覆われている。唾液腺の導管に特徴的な小棒構造の上皮Stäbchenepithelは、涙腺の導管には存在しない。比較的太い導管では、結合組織性の基底層が外側の輪走線維と内側の縦走線維からなるが、筋線維は含まれない。
神経: 涙腺の(副交感性)神経は橋唾液分泌核Nucleus originis salivatorius pontisに由来し、まず大浅錐体神経を経て翼口蓋神経節に至る。ここから発する節後線維は頬骨神経および(涙腺神経の)頬骨神経との交通枝Ramus communicans (n. lacrimalis) cum n. zygomaticoを通って涙腺神経に入り、この神経を介して涙腺に分布する(図499(味覚伝導の経路、涙腺と唾液腺への神経伝導の経路) )。涙腺に至る神経線維は大部分が無髄で、腺房の基底膜上で叢を形成し、そこから極めて細い小枝や線維が基底膜を貫いて細胞上網Überzellennetzを作る。さらに神経糸が涙腺細胞間に侵入し、細胞間網Zwischenzellennetzを形成する(図583(毛細血管の神経叢)、584(ヒトの涙腺:終末部の末端における交感神経性基礎叢)、図585(ヒトの涙腺:交感神経性の基礎叢)、586(ヒトの涙腺:上皮細胞間神経線維をもつ1つの腺体の横断面) )。