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図418(第三脳室、大脳基底核と脳幹の一部、四丘体、小脳の上面)
図433(**脳,前額断面IV:**後交連の直前で切断し、後方の切断面を前方からの図)
第三脳室(Ventriculus tertius)は左右径の狭い腔所である。後方はやや幅広く、前方は深くなっており、間脳の諸壁の間に位置する。前方は第三脳室終板、脳弓柱、および前交連によって境界される。後方は中脳水道(Aquaeductus mesencephali)に移行し、前方外側は室間孔(Foramen interventriculare)という脳弓柱と視床との間にある卵円形の孔を通じて、両側とも終脳の側脳室に連続している(図408(脳の正中断面) )。第三脳室の中央を貫いて中間質(Massa intermedia)が存在する(図428(中脳、間脳および尾状核の上方からの図) )。
中間質は全例の約5分の1で欠如している。(日本人における中間質の欠如率は平均19~20%である。その大きさは長さ4.0~14.0 mm、幅0.7~11.0 mmの範囲にある。[常田信逸:邦人脳に於ける中間質に就て。北越医学会雑誌50年、1503~1505、1935])また、中間質が重複していることもある。その長さは第三脳室の幅に関係している。横断面の形状と大きさは非常に多様である。Tsuneda(Fol. anat. Jap.、13. Bd.、1935)によれば、中間質の存否に関してヨーロッパ人と日本人との間に人種差は認められない。
第三脳室には特別な突出部がいくつか存在する。すなわち三角陥凹(Recessus triangularis)、視束陥凹(Recessus opticus)、漏斗陥凹(Recessus infundibuli)、松果陥凹(Recessus pinealis)、松果上陥凹(Recessus suprapinealis)である(図408(脳の正中断面) 、図410(脳の正中断面の一部を拡大したもの) )。脳の正中断面では、三角陥凹を除き、これらの諸陥凹を最もよく概観できる。三角陥凹は図408(脳の正中断面) に示したような標本で最も明瞭に観察できる。この陥凹は前交連と両側の脳弓柱との間に存在する(図431(脳、前額断面II:前交連を通る断面) )。視束陥凹は第三脳室終板と視神経交叉との間にある。漏斗陥凹は漏斗内にあり、視神経交叉の後方に位置する(図410(脳の正中断面の一部を拡大したもの) )。
松果陥凹と松果上陥凹については、上述(松果体 Corpus pineale (Epiphysis), Zirbel )の松果体の項を参照されたい。第三脳室底の後部には、中脳水道の正中溝の続きをなす正中縦走溝がある。第三脳室の左右側壁には、室間孔から中脳水道に達する視床下溝(Sulcus hypothalamicus)が存在する(図408(脳の正中断面) )。第三脳室の側壁は間脳の内側壁によって形成され、前壁は第三脳室終板と左右の脳弓柱からなる。また、両側の脳弓柱の間に露出している前交連もその形成に寄与している。第三脳室の後壁は後交連と松果体の底部から構成される。下壁は、後部が両側の中脳被蓋の前方部により、前部は脳底灰白交連によって形成される。上壁、すなわち第三脳室の蓋板は第三脳室脈絡叢を有し、第三脳室脈絡組織(Tela chorioidea ventriculi tertii)の一部を構成している(図408(脳の正中断面) 、図410(脳の正中断面の一部を拡大したもの) 、図432(脳、前額断面III:中間質を通る切断面) 、図433(**脳,前額断面IV:**後交連の直前で切断し、後方の切断面を前方からの図))。
[図430]脳、前額断面I:側脳室の前頭角を通る断面。後方の切断面を前から見た図。(9/10)
[図431] 脳、前額断面II:前交連を通る断面。後方の切断面を前方から見た図。(9/10)