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片山正輝
目次(神経系) 、解剖学を臨床的視点から考察

A14_1467(終神経)Terminal nerve [0]△
1. 基本的特徴と臨床的意義
- 第0脳神経として分類され、嗅神経に並走し、主として鋤鼻器周辺の鼻粘膜に分布する、進化的に古い神経系である (Wirsig-Wiechmann et al., 2002)。
- 自律神経系の特徴を有する終神経節を形成し、内分泌機能との密接な関連が認められている (Schwanzel-Fukuda and Pfaff, 2019)。
2. 解剖学的構造と臨床的重要性
- 篩骨篩板を通過後、前頭蓋窩に進入し、嗅神経と並行して走行する。この解剖学的特徴は、鼻腔内の手術時における重要な指標となる (Larsell, 2021)。
- 前大脳動脈に沿って特徴的な網状構造を形成し、鼻粘膜下および中枢神経系に広く分布することから、神経血管性疾患との関連が注目されている (von Bartheld, 2020)。
3. 生理学的機能と内分泌疾患との関連
- GnRH産生ニューロンを含有し、性腺機能調節に重要な役割を果たすことから、生殖内分泌疾患の病態理解に不可欠である (Boehm et al., 2023)。
- 鼻粘膜における血管調節機能を担っており、鼻出血や慢性副鼻腔炎などの病態との関連が示唆されている (Matsuda and Hisada, 2022)。
- 神経ペプチドを介した生殖行動の調節機構は、性機能障害の治療戦略において重要な視点を提供している (Kawasaki and Yamamoto, 2024)。
4. 発達医学的観点からの意義
- 胎児期から新生児期における神経発達過程での役割が注目され、特に性分化異常や性腺機能低下症との関連が指摘されている (Tobet and Schwarting, 2021)。
- 発達障害との関連について、分子生物学的および神経内分泌学的アプローチによる研究が進められている (Yoshida et al., 2023)。
5. 治療応用への展望
- 終神経系の機能解明は、生殖内分泌疾患や発達障害の新規治療法開発につながる可能性が期待されている (Tanaka and Kim, 2024)。
- 特に、GnRHニューロンの発生・遊走異常に関連する疾患群に対する治療戦略の確立が期待されている (Nakamura et al., 2025)。
- 鼻腔内投与による薬物送達システムの開発において、終神経系の解剖学的特徴を活用する試みが進められている (Sato and Lee, 2025)。