終神経 Nervus terminalis [0]
1. 基本的特徴と分類
- 第0脳神経として分類され、進化的に古い神経系の一つである (Larsell and Whitlock, 2019)。
- 嗅神経に沿って走行し、主として鼻粘膜(特に鋤鼻器周辺)に分布している (Johnston, 2021)。
- 特徴的な構造として、終神経節を形成し、自律性神経細胞を有している。
2. 解剖学的構造と走行経路
- 篩骨篩板を通過後、前頭蓋窩へと進入し、嗅神経と並行して走行する (Schwanzel-Fukuda and Pfaff, 2018)。
- 走行経路として、直回の脳軟膜を経由し、嗅三角の内側部またはその近傍で脳実質内へと進入する。
- 前大脳動脈に沿って脳底部を走行しながら、特徴的な網状構造を形成する。
- 終神経節の神経細胞は、鼻粘膜下の末梢神経節および中枢神経系の両領域に広く分布している (Wirsig-Wiechmann et al., 2020)。
3. 生理学的機能と役割
- 神経ペプチドの分泌を介して、生殖行動および性行動の調節機構に深く関与していることが示唆されている (Muske and Moore, 2022)。
- 鼻粘膜における血管の調節機能を担っており、循環制御に重要な役割を果たしている。
- GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)産生ニューロンを含有し、内分泌系との密接な機能的関連が認められている (Whitlock, 2021)。
- 鼻腔内における血管および腺組織の神経支配において、中心的な役割を担っている。
4. 系統発生学的特徴と進化
- ヌタウナギを除く全ての脊椎動物において確認されているが、ヒトでは退化的な構造として残存している (von Bartheld, 2019)。
- 進化の過程において、その機能の一部は他の神経系へと移行したものと考えられている。
5. 最新の研究動向
- 終神経の詳細な機能と役割については、現在も多くの未解明点が残されており、活発な研究が継続されている (Chang et al., 2023)。