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目次(VI. 感覚器)

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図707(蝸牛管第2回転の強拡大図)

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図708(ラセン縁)

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図709(第2回転におけるラセン板縁および基底板の前庭側表面の所見)

基本構造と位置

主要な構成要素

組織学的特徴

これは骨ラセン板の外方端に位置する低い隆起であり、蝸牛管の内腔へ突出している。外方ではヒサシ状に伸び、ラセン板の前庭唇Labium vestibulareという鋭い稜となる。前庭唇の外側で鼓室階寄り(下方)にはラセン板の鼓室唇Labium tympanicumが存在し、両唇の間のくぼみはラセン溝Sulcus spiralisとよばれる。

内方端から外方端までを含む1小片を上方からみると、以下の構造が観察される:R(前庭階壁のラセン縁への付着線)、P(ラセン縁の乳頭と乳頭間溝)、zp(歯の形をした乳頭、すなわちフシュケの聴歯)、i(歯間溝)、c(聴歯列の前端、すなわち前庭唇)、b(基底膜)。上皮を除去すると、その下層に放線状の微細な溝が確認できる。

ラセン縁を前庭階側から観察すると、前庭唇は平行な溝によって深く切り込まれ、整然と配列した個々の部分に分かれている。これはHuschkeによって聴歯Gehörndhneと名付けられ、約7000個の切歯が一列に並んだような形態を示す。内方(蝸牛軸側)へは聴歯の延長が伸びているが、この部分では長いものや丸いものが不規則に多列配置している。これらもラセン縁実質の突出であり、特徴的な光沢を呈することが多い。突出間には陥凹があり、フシュケの聴歯部では歯間溝interdentale Furchen、その他の突出部では乳頭間溝interpapillare Furchenと呼ばれる。

これらの溝は密集した小型の上皮細胞で満たされている。上皮細胞は突出部表面にも存在するが、ここでは扁平化している。すなわち、ラセン縁の全表面は上皮細胞で被覆されており、細胞境界は硝酸銀染色で明瞭に描出される。前庭階壁の上皮は、ラセン縁の上皮に直接連続している。

ラセン縁において上皮下組織は極めて硬い線維性の結合組織であり、樹枝状突起を持つ紡錘形細胞を含む。少数の血管が表面近くまで到達することがあるが、それは稀である。時にこの結合組織内に石灰塩が沈着し、不規則な小板を形成することがある。ラセン縁の下面は骨ラセン板の骨組織に直接接しており、したがってラセン縁は一種の変化した骨膜とみなすことができる。

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[図708]ラセン縁

内方端から外方端までを含む1小片を上方から観察したもの。

R:前庭階壁のラセン縁への付着線、P:ラセン縁の乳頭と乳頭間溝、zp:歯の形をした乳頭(フシュケの聴歯)、i:歯間溝、c:聴歯列の前端(前庭唇)、b:基底膜。上皮を除去すると、その下層に放線状の微細な溝が確認できる。

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[図709]第2回転におけるラセン板縁および基底板の前庭側表面の所見。上皮被覆の大部分を除去している(G. Retzius撮影)×800