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基本構造
解剖学的特徴
内部構造
関連構造
図687(新生児の左側頭骨錐体部)、688(内耳道底(左側頭骨))
図692(蝸牛ラセン管を開いたところの模型図)、693(蝸牛の中央を通る断面)、694(蝸牛管の上端)
蝸牛軸の外面を一見すると、これをラセン状に取り巻くように2枚の骨葉が出ていることがすぐにわかる(図692(蝸牛ラセン管を開いたところの模型図)、693(蝸牛の中央を通る断面)、694(蝸牛管の上端))。その1つは隔壁Zwischenwandで、もう1つは骨ラセン板である。隔壁はそれぞれの回転の間を仕切るものであるが、骨ラセン板は管の中ほどまで伸びているだけで、ラセン管の外壁には達しない。このように骨ラセン板はラセン管を2本の並行して走る道に不完全に分けている。これらの道は蝸牛の階Treppenと呼ばれる。骨ラセン板にその続きとして膜ラセン板Lamina spiralis membranaceaが付くと、両階の仕切りは1カ所を除いて完全なものとなる。一方の階は前庭階Scala vestibuli, Vorhofstreppeと呼ばれ、広い開口をもって前庭に通じており、前庭から始まっている。もう1つの階は広い開口をもって蝸牛窓によって鼓室に開くもので、これを鼓室階Scala tympani, Paukentreppeという。ただし自然の状態では蝸牛窓が第二鼓膜によって閉ざされていることは既に述べた。両階のうち前庭階はその外側部に、蝸牛器官の全体を通じて最も重要な部分である蝸牛管Ductus cochlearisをもつことが特徴的である(図686(成人の蝸牛の正中断面) )。
骨ラセン板は図689(左側の骨迷路を開示した図)でみるように、後半規管の膨大部脚の開口および蝸牛窓の近くで、前庭の内側壁から始まっている。
骨ラセン板の始まりの部分に向かい合って1枚の骨小板が出ており、ラセン板の自由縁と外側壁との間の隙間を狭くしている。この骨小板は第二ラセン板Lamina spiralis secundariaと呼ばれる。これは前庭から遠ざかるほど低くなり、最初の1回転の半分の長さのところで消失する。骨ラセン板と第二ラセン板の出発点は、前庭の蝸牛陥凹Recessus cochlearisと呼ばれる場所である。この陥凹は前庭稜の下行部と球形嚢陥凹の下縁とによって囲まれる小さなくぼみで(図689(左側の骨迷路を開示した図))、膜性の蝸牛管の前庭盲端を収容する。骨ラセン板と第二ラセン板との間の細長い隙間は、蝸牛のその他の腔所と同様に膜ラセン板によって閉ざされている。
骨ラセン板は最後の半回転の始まりで蝸牛軸から離れ、鎌形の骨小板として蝸牛腔内に遊離状態で突出している。この遊離した骨ラセン板の部分は骨ラセン板鈎Hamulus laminae spiralis(図689(左側の骨迷路を開示した図)、図692(蝸牛ラセン管を開いたところの模型図)、693(蝸牛の中央を通る断面)、694(蝸牛管の上端))と呼ばれ、その凸縁が外方に向き、凹縁が蝸牛軸板(蝸牛軸の続き)の方を向いている。この骨ラセン板鈎によって囲まれてできる門は蝸牛孔Helicotrema(図692(蝸牛ラセン管を開いたところの模型図)、693(蝸牛の中央を通る断面)、694(蝸牛管の上端))と呼ばれる。膜ラセン板は鈎の凸縁から生じており、蝸牛管もそれに付着しているが、いずれもこの蝸牛孔を満たしていない。この門を通って前庭階と鼓室階が相互に移行しており、両階は他の場所では完全に分離されているが、この蝸牛孔を通じてのみ常に自由に連続している(図692(蝸牛ラセン管を開いたところの模型図)、693(蝸牛の中央を通る断面)、694(蝸牛管の上端))。
骨ラセン板は緻密な1つの骨板ではなく、ラセン状の隙間によって2葉に分かれている。前庭階側の1葉はかなりの厚さがあるが、鼓室階側のものは薄い骨の箔にすぎない。この隙間は骨ラセン板の全長にわたって伸び、蝸牛神経がその終末領域である蝸牛管へラセン状に放散する際の通路となっている。この隙間は蝸牛軸に近づくと横断面が卵円形の管となって広がる。この部分は蝸牛軸ラセン管Canalis spiralis modioliと呼ばれ、その中にラセン神経節Ganglion spirale cochleaeがある。蝸牛軸ラセン管にはラセン列の孔から始まる多数の管、すなわち蝸牛軸縦管Canales longitudinales modioliが続いている(図687(新生児の左側頭骨錐体部)、688(内耳道底(左側頭骨))、図689(左側の骨迷路を開示した図))。