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目次(IV. 内臓学)

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図167(直腸を外方から剖出する)、168(直腸:同じ直腸の標本を腹側正中線で切開し、壁の両側を少し外側に引き離したもの)

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図262(男性の骨盤内臓器)

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図266(男性骨盤の正中断面)

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図275(女性の骨盤内臓器)

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図276(女性骨盤部の正中断面)

直腸は腸の終末部であり、第3仙椎の上縁から会陰まで達している。ただし、その経路は直線的ではなく、矢状面および前額面で湾曲している。

矢状面における湾曲は2つある。1つは仙骨の凹面に沿って後方に凸を描く仙骨曲(Flexura sacralis)であり、もう1つは前方に凸で、腸の末端部が尾骨尖を回って後方に曲がることで生じる会陰曲(Flexura perinealis)である(図262(男性の骨盤内臓器)図266(男性骨盤の正中断面)図276(女性骨盤部の正中断面))。

前額面における湾曲は個体差が大きく、複数存在する。その湾曲は顕著で、直腸の一部が骨盤の右半に突出するほどである。通常、右側に向かう2つの湾曲があり、上方のものは岬角の左側から始まり、下方の湾曲は肛門付近にある。

直腸は結腸や盲腸と異なり膨起を持たないため、表面は平滑で円柱状を呈し、結腸ヒモも存在しない。長さは15~20cmで、太さはS状結腸より細い。ただし、横ヒダ(Plicae transversae)の上方にやや拡張した部分があり、これを膨大部(Pars ampullaris)と呼ぶ。

最下部は直腸肛門部(Pars analis recti)と呼ばれ、ここで消化管が外部に開口する。直腸が収縮時には、粘膜全体に輪走および縦走する多数のひだが存在する。壁が中等度に伸展すると一部のひだは消失するが、消失しない性質のひだが残る。これらは通常3本の輪走するひだで、横ヒダ(Plicae transversae)と呼ばれる。中央の高さにある最大のものは右側に位置し、肛門の上方6~6.5cmにあって、コールラウシュヒダ(Kohlrauschsche Falte)と呼ばれる。他の2つは左側にある。各ひだに対応して、腸管の反対側が外方に膨隆している。

外観上、直腸は側方にくびれを持つ。多くの場合、直腸下部に2~3個の明瞭なくびれが観察される。縦走筋層は直腸全体で均等に発達しているわけではなく、前面と後面で特に厚い。前面の肥厚はS状結腸の自由ヒモと大網ヒモの延長であり、後面の肥厚は間膜ヒモの延長である。

**局所解剖:**直腸は腸管が腸間膜を失い、その後面が仙骨に接するところから始まる。これは第3仙椎の上縁に位置する。直腸は小骨盤内の様々な器官と重要な位置関係を持つ。男性では膀胱・精嚢腺・前立腺の後方に位置し(図262(男性の骨盤内臓器)図266(男性骨盤の正中断面))、女性では子宮と膣の後方に位置する(図275(女性の骨盤内臓器)図276(女性骨盤部の正中断面))。

腸管の下端は肛門(Anus, After)である。これは拡張性に富む開口部で、内側は粘膜に、外側は皮膚に覆われており、この部位で粘膜と皮膚が相互に移行する。

**肛門輪(痔輪)**Anulus haemorrhoidalisは、本来の肛門の口を取り囲む輪状の高まりを指す。これは内肛門括約筋M. sphincter ani internusによって、他の部分よりやや突出している。肛門輪は直腸洞Sinus rectales(直腸壁の各層 Die Schichten der Rektumwand 参照)のすぐ下方に接し、また上方から伸びる直腸柱Columnae rectalesと合流している。

肛門が閉じているとき、その周囲の皮膚はひだを形成する。この部位では、結合組織が多数の乳頭を形成し、脂腺を伴う毛が存在する。さらに、肛門周囲腺Glandulae circumanalesという管状の腺も存在する。この腺はヒトでは発達が乏しいが、多くの哺乳動物では形態的にも機能的にも重要な役割を果たしている。

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[図166]十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官を自然の位置で示す

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[図167] 直腸を外方から剖出する(3/4倍)

*コールラウシュヒダに相当する部分のくぼみ。

[図168] 直腸:同じ直腸の標本を腹側正中線で切開し、壁の両側を少し外側に引き離したもの(3/4倍)

直腸壁の各層 Die Schichten der Rektumwand

腸液 Darmsaft

腸の長さと腸の重さ Darmlänge und Darmgewicht