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目次(IV. 内臓学)

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消化管は単一の円筒形の管ではなく、長さの異なる5つの部分に区分されている。各部は末端が細く、始端が太い、おおよそロート状または円錐状の形をしており、これらが連続して全体を構成している。この構造を模式的に示すと図169(消化管の5つのポート状の部分を示す模型図)のようになる。

Rolsennの研究によれば、子供は成人と比較して空腸からS状結腸まで、または空腸から回腸までの部分が相対的に長い。女性は男性より空腸・回腸がやや短く、反対に大腸がやや長い傾向がある。死後硬直により腸の長さは短縮するが、内部にガスが蓄積すると伸長する。腎臓・肝臓・腸・腹膜の慢性疾患では、腸の長さが減少する傾向がある。

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[図169]消化管の5つの口ート状の部分をしめす模型図

1 口腔,2 咽頭と食道,3 胃,4 小腸,5 大腸と直腸.

M. Mühlmannは腸(胃を含む)の重さと長さを様々な年齢層で研究した。新生児の腸の重さは142gから149g程度であり、成人では1175gから2755gに達する。腸の重さの変動は概ね体重の変動に対応している。生涯を通じて腸は全身の成長と並行して発達する。加齢により体重が減少すると腸の重さも減少するが、体重の約3%という腸の重さの割合は一定に保たれる。また、腸の長さと体幹の長さの比率も生涯にわたってほぼ一定の範囲内に留まる。

ElzeとGanterは造影剤を用いて小腸のうねりをX線で観察し(図117(胃と十二指腸と空腸:レントゲン像))、生体においても小腸は数メートルの長さがあることを示した。これにより、死体解剖や手術時に測定された腸の長さがおおむね正確であることが確認された。

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図117(胃と十二指腸と空腸:レントゲン像)

Lewke(Anat. Anz., 94. Bd., 1943)は固定保存した死体で、腸間膜の付着部位に沿って小腸の長さを測定し、約3メートルであることを明らかにした。また、個体差による変動がかなりの範囲で存在することも判明した。