https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
片山正輝
目次(神経系) 、解剖学を臨床的視点から考察

A14_1471(嗅神経糸)Olfactory nerves△
基本構造と経路
- 嗅神経(第一脳神経)を構成する主要な神経線維束であり、鼻腔の嗅覚に関わる重要な解剖学的構造である (Schwob et al., 2018)。
- 鼻粘膜嗅部の上皮層に存在する双極性嗅細胞から伸びる無髄軸索によって形成され、これらが集束して神経線維束を形成する (Doty and Kamath, 2014)。
- 内側と外側の2列(各16-24本)の神経線維束として篩骨篩板の複数の小孔を通過し、頭蓋底を経て頭蓋腔内へと進入する (Hummel et al., 2017)。
- 最終的に前頭蓋窩の嗅球に到達し、シナプスを形成して終末する。
機能的特徴と臨床的意義
- 嗅覚情報を伝達する一次求心性線維として機能し、嗅上皮の受容器で感知された化学物質の情報を正確に嗅球へと伝達する (Buck, 2004)。
- 臨床的に重要な特徴として、成人脳においても神経再生能力を保持している数少ない中枢神経系の一つである (Brann and Firestein, 2014)。
- 頭部外傷(特に前頭蓋底骨折)による篩板の損傷で切断されると、外傷性嗅覚障害(外傷性無嗅覚症)を引き起こす (Costanzo and Miwa, 2006)。
- 上気道感染(感冒後嗅覚障害)、神経変性疾患、加齢性変化などによっても機能低下が生じ、患者のQOLに重大な影響を及ぼす可能性がある (Hummel et al., 2021)。
- COVID-19感染症においても嗅覚障害が高頻度で認められ、臨床的に重要な症候の一つとして注目されている (Lechien et al., 2020)。
診断・治療における留意点
- 嗅覚障害の評価には、基準嗅力検査やアリナミンテストなどの客観的検査方法が用いられる (Hummel et al., 2017)。
- 治療方針は原因に応じて選択され、急性炎症性変化による場合は保存的治療が、器質的障害による場合は手術的治療が検討される (Patel, 2017)。
参考文献
- Brann, J.H. and Firestein, S.J. (2014) 'A lifetime of neurogenesis in the olfactory system', Frontiers in Neuroscience, 8, pp. 182.
- Buck, L.B. (2004) 'Olfactory receptors and odor coding in mammals', Nutrition Reviews, 62(11), pp. S184-S188.