嗅糸 Fila olfactoria
基本構造と経路
- 第一脳神経である嗅神経を構成する主要な要素である (Gray and Lewis, 2023)。
- 鼻粘膜嗅部の上皮層に存在する双極性嗅細胞から伸びる無髄軸索によって形成される (Standring, 2024)。
- 内側と外側の2列(各16-24本)の神経線維束として篩骨篩板の孔を通過し、頭蓋腔内へ進入する。
- 嗅球において終末する。
機能的特徴
- 嗅覚情報の伝達を担う一次求心性線維である (Moore et al., 2023)。
- 嗅上皮の受容器で感知された化学物質の情報を嗅球へと伝達する。
- 成人でも神経再生が可能な数少ない中枢神経系の一つである (Netter, 2024)。
臨床的意義
- 頭部外傷による篩板の損傷で切断されると、嗅覚障害を引き起こす可能性がある (Drake et al., 2024)。
- 上気道感染や加齢によっても機能低下が生じうる。
解剖学的関係
- 篩板の位置は前頭蓋窩の最前下部に位置し、鼻腔上部と直接連絡している (Clemente, 2023)。
- 嗅糸は脳脊髄膜(硬膜、クモ膜、軟膜)に包まれた状態で走行する。
- 嗅球との連絡部位は嗅球腹側面である。
発生学的特徴
- 嗅覚上皮の基底細胞から新しい嗅細胞が継続的に産生される (Sadler, 2024)。
- 嗅神経糸は生涯にわたって再生能力を保持している。