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図166(十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官の自然な位置を示す図)
図237(右腎臓および腎上体の前面と他器官との接触面)、238(左腎臓および腎上体の前面と他器官との接触面)
腎上体は左右2つある扁平な器官で、腎臓の上端近くに位置する。腎臓と腎上体の間は脂肪組織で隔てられている。左右の腎上体の形状は若干異なり、左側は半月形に近く、右側は三角形である。各腎上体には前面と後面(Facies ventralis, Facies dorsalis)、くぼんだ腎面(Facies renalis)、そして上縁・内側縁(Margo cranialis, Margo medialis)がある。後面には腎上体門(Hilus corporis suprarenalis)が存在する。
被膜を通して深黄色ないし褐色がかった皮質(Substantia corticalis, Rindensubstanz)が透けて見えるため、腎上体は黄色を帯びている。皮質は切断面では硬く、条線が見られ、わずかな髄質を取り囲んでいる。髄質(Substantia medullaris, Marksubstanz)は柔らかく粘土状で、成人では灰色を呈する。
各腎上体は強靭な線維性被膜に包まれている。被膜は皮質と密接に結合しているため、皮質を損なわずに剥がすことはできない。被膜からは豊富な線維性の突起が内部に侵入している。
腎上体の重量は11〜18グラムである。若年者、小児、胎児では相対的に重量が大きい。長さは4〜6cm、幅は2〜3cmである。Hammarによれば重量は3.5〜8.5グラムとされる。皮質と髄質の比は6.5〜17.6:1である(Hammar, A., Z. mikr.-anat. Forsch.,1. Bd.,1924)。日本人の腎上体の平均重量は男性7.5グラム、女性7.05グラムで、長さは平均2.7〜3.26cm、幅は5.3〜5.68cm、厚さは4.4〜5.5cmである(羽太鋭治、日病理会誌、1918)。また、成人の腎上体の平均重量は、男性では右8.71グラム、左9.26グラム、女性では右7.98グラム、左8.29グラム(岡睦、京都医誌38巻、昭和16年下)、あるいは(佐藤文一、東京医大誌8巻3号)男性では右5.94グラム、左6.39グラム、女性では右5.01グラム、左5.25グラムである。
皮質は中胚葉に由来し、髄質は交感神経に由来する。
局所解剖:
I. 全身に対する位置関係:腎上体は上腹部の外側部に位置する。
II. 骨格との位置関係:第11胸椎の高さで脊柱の横に位置する。
III. 他の諸器官との位置関係:左右の腎上体は内側で横隔膜の腰部、下方で腎臓の上端、後方で横隔膜にそれぞれ接している。右腎上体の前方には肝臓があり、内側には下大静脈と十二指腸がある。左腎上体は大動脈の近くにあり、膵臓と脾臓に接し、前方は網嚢によって胃と隔てられている。左右の腎上体の存在する領域には腹腔神経叢の大きな神経節群がある。