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目次(IV. 内臓学)

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図113(腺腹)

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図114(十二指腸と膵臓)

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図115(空腸)、116(回腸)

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図117(胃と十二指腸と空腸:レントゲン像)

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図118(腸壁のリンパ管(青色で表示)。小ウシの小腸縦断面)

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図119(ヒトの回腸の円柱上皮)

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図120(単純細胞および顆粒細胞)、121(パネート細胞)、122(基底顆粒細胞)

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図123(空腸の粘膜を表面に平行に切断したもの)、124(大腸の粘膜を表面に平行に切断したもの)

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図125(ヒトの十二指腸上部の縦断面)

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図126(ヒトの空腸の縦断面)

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図127(回腸の絨毛)

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図128(ヒトの空腸上部における三角形の花弁状を呈する1個の絨毛内の血管)

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図129(回腸粘膜の垂直断面)、130(小腸粘膜の表面像)

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図131(集合リンパ小節(パイエル板))、132(集合リンパ小節の表面に平行な断面)

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図133(腸筋神経叢)、134(モルモットのアウエルバッハ神経叢における1つの神経節内の細胞)

小腸の壁は漿膜、筋層、粘膜下組織、粘膜の四層から構成される。

  1. 漿膜Tunica serosa(図126(ヒトの空腸の縦断面)):腹膜の項を参照のこと。

  2. 筋層Tunica muscularis:外側の縦走線維層Stratum longitudinaleと内側の輪走線維層Stratum circulareがある(図125(ヒトの十二指腸上部の縦断面)図126(ヒトの空腸の縦断面))。縦走線維層は薄く、輪走線維層はより厚い。両層とも平滑筋細胞で構成される。

    両筋層は細い筋線維束によって所々で相互に連結している。これらの筋束は独立して走行することもあれば、貫通する血管に伴走することもある(Landau, Zeitschr. mikr.-anat. Forsch., 14. Bd., 1928)。筋層の収縮により腸の特徴的な蠕動運動Peristaltische Bewegungが生じ、内容物が肛門方向へ運ばれる。

  3. 粘膜下組織Tela submucosa(図126(ヒトの空腸の縦断面)):かなり厚い疎性の層で、粘膜と比較的強固に結合している。他の部位と同様、この層には粘膜に至る比較的太い脈管や神経が含まれる。

  4. 粘膜Tunica mucosa(図125(ヒトの十二指腸上部の縦断面)図126(ヒトの空腸の縦断面)):その自由表面は絨毛状でビロード様の外観を呈する。これは多数の小さな指状突起、すなわち腸絨毛Villi intestinales, Darmzottenの存在による。粘膜下組織との境界には粘膜筋板Lamina muscularis mucosaeがある。Baecker(Z. mikr.-anat. Forsch., 34. Bd.)によると、この粘膜筋板は内輪と外縦の2層から成る。

上皮は単層円柱上皮で、補充細胞を有する(図119(ヒトの回腸の円柱上皮))。上皮細胞の一部は杯細胞である。円柱細胞の自由表面には発達した小皮性の部分があり、これを小棒縁Stäbchensaumと呼ぶ。近年の研究によると、ここには微細な骨組みがあり、それを横断する多数の細管がある(小棒構造Stäbchenstruktur)。これらの管を通じて、上皮細胞の微細な原形質突起が伸長したり退縮したりする。

粘膜の詳細な構造は、円柱上皮、固有層、多数の腺から成る。固有層は繊細な疎性結合組織で、様々な量のリンパ球を含む。

絨毛図118(腸壁のリンパ管(青色で表示)。小ウシの小腸縦断面)図125(ヒトの十二指腸上部の縦断面)図126(ヒトの空腸の縦断面)図127(回腸の絨毛))は粘膜が作る突起であり、基本的に粘膜と同じ構造を持つが、いくつかの特徴的な点がある。その数はおよそ400万に達し、腸管内の栄養物質に浸かり、吸収すべき物質を取り込む。各絨毛は1つの中心乳ビ腔(zentraler Chylusraum または Zottensinus)を持つ。これは腸粘膜の乳ビ管が棍棒状に広がり、その内面が内皮で覆われたものである(図118(腸壁のリンパ管(青色で表示)。小ウシの小腸縦断面)図127(回腸の絨毛))。大きな絨毛では2つ以上の中心乳ビ腔が存在する。また、この乳ビ腔と上皮の間には絨毛の血管が広く分布しており(図127(回腸の絨毛)図128(ヒトの空腸上部における三角形の花弁状を呈する1個の絨毛内の血管))、その量は非常に多い。

絨毛の血管に血液が充満すると絨毛が勃起する。その逆の働きをする仕組み、つまり絨毛を周期的に収縮させるのは、絨毛の結合組織内をその長軸方向に貫く平滑筋束の精巧な網状構造である。この平滑筋網は粘膜筋板から連続している。絨毛内の筋肉には当然神経が分布している。また、結合組織の隙間にリンパ球が存在し、さらに上皮内(図119(ヒトの回腸の円柱上皮))および上皮の自由表面にもリンパ球が認められる。

リンパ球は上皮を通過して自由表面に遊走する。この現象はPh. Stöhrによって最初に記述され、後にWolf-Heideggerによって確認された(Z. mikr.-anat. Forsch., 45. Bd., 1938)。

絨毛の機能については、古くから以下のように考えられている。血流が絨毛を勃起させ、それにより絨毛の結合組織が引き伸ばされる。その結果、中心乳ビ腔が拡張し、上皮が吸収した乳ビを吸い込むように作用する。こうして中心乳ビ腔が徐々に満たされていく。次に、絨毛の平滑筋線維が収縮し、中心乳ビ腔の内容物を粘膜下組織のリンパ管叢へと押し出す。その後、再び血流によって絨毛が勃起し、このプロセスが繰り返される。中心乳ビ腔から押し出された内容物の逆流を防ぐため、弁が備わっている。

ただし、Graf Spee(Arch. Anat. Phys. 1885)の説では、中心乳ビ腔は絨毛が短縮したときに広がり、勃起したときに狭くなるとされており、これは上述の説と逆の現象を示している。

絨毛の形状は小腸の各部位で異なる。十二指腸上部では幅広い絨毛が見られ、その後の部分では葉状となる。さらに下部に進むにつれ、幅が減少し長さが増す。空腸では舌状、回腸の終端では糸状となる。

M. Heidenhain(Anat. Anz., 40. Bd., 1911)によると、ネコの空腸では1 cm²あたり4500の絨毛があり、そのうち3分の1は複合型である。絨毛の存在により、1 cm²の腸表面の上皮吸収面積は5.6 cm²に拡大する。指状の絨毛1本の上皮は約2800の細胞を持ち、1 cm²の腸表面には約2000万の上皮細胞が存在する計算になる。

絨毛の高さは0.2~1.2 mmの範囲である。絨毛は十二指腸で最も密集しており(1 cm²あたり22~40個)、回腸に向かうにつれてその数が減少する(30~18個、さらに少ないこともある)。

各絨毛は1本(時に2本以上)の動脈を持ち(図127(回腸の絨毛)図128(ヒトの空腸上部における三角形の花弁状を呈する1個の絨毛内の血管))、これが分岐せずに絨毛の先端まで進み、そこで2本に分かれる。1本は上皮下の密な毛細血管網に移行し、もう1本は毛細血管網と結合せずに直接静脈へ移行する。つまり、動静脈吻合(arterio-venöse Anastomose)が存在する(SPANNER, Morph. Jahrb., 69. Bd., 1932)。