任脈(にんみゃく)

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十四経発揮(1341年・滑伯仁)

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類経図翼(1624年・張介賓)

経穴図版(澤田健)任脈.png

澤田健(1940年)

経穴図版(代田文誌)任脈.png

代田文誌(1940年)

任脈(にんみゃく、Conception Vessel、CV)は、奇経八脈の一つで、体の前正中線を走行する経脈です。会陰部(CV1)から始まり、腹部・胸部・頸部を通って、顔面(CV24)まで至る全24穴から構成されています。

任脈(CV)の経穴一覧

国際表記 経穴 位置(ランドマーク) 解説
CV1 会陰(えいん) 会陰部正中。肛門と外陰部(男性:陰嚢後端付近、女性:後陰唇交連付近)の中点 任脈・督脈・衝脈の起点とされる。陰部疾患や痔疾に用いられるが、実際の施術は慎重を要する。図中の「肛門」表記は位置関係の補助で、穴名は会陰。
CV2 曲骨(きょっこつ) 下腹部正中。恥骨結合の上縁直上の正中。 膀胱の募穴に近接。泌尿器系疾患、下腹部痛、月経不順などに用いられる。触診では恥骨結合(骨性の硬い隆起)をまず同定してから、正中に乗せる。
CV3 中極(ちゅうきょく) 下腹部正中。恥骨結合上縁と臍(CV8)を結ぶ線上で下方寄り 膀胱の募穴。泌尿器・生殖器系の主要穴で、頻尿、遺尿、月経痛、不妊症などに頻用される。触診では腹直筋の内縁が作る正中(白線)上に置く。
CV4 関元(かんげん) 下腹部正中。CV3より上、CV5より下。 小腸の募穴で、元気を補う重要穴。補腎・培元の代表穴として、虚弱体質、冷え性、生殖機能低下に広く使用される。触診では臍(CV8)と恥骨結合(CV2)の距離感を基準に、正中の連続性で決める。
CV5 石門(せきもん) 下腹部正中。CV4とCV6の間。 三焦の募穴。水分代謝の調整、下腹部の冷え、婦人科疾患に用いられる。古典では妊婦への施術を禁忌とする記述もある。触診では臍からの縦方向のラインを崩さず、白線上に配置。
CV6 気海(きかい) 下腹部正中。臍(CV8)より下。 気を補う代表穴。全身の気力向上、疲労回復、下腹部痛、泌尿器・生殖器疾患に広く応用される培養穴。触診では臍中心を確定してから真下に取る。
CV7 陰交(いんこう) 下腹部正中。CV6とCV8の間。 任脈と衝脈の交会穴。婦人科疾患、腹痛、ヘルニアなどに用いられる。触診では臍輪の縁を触れて中心(CV8)を確定し、上下の並びを整える。
CV8 神闕(しんけつ)(臍) 臍の中心(臍窩)。 臍部そのもの。灸療法(隔物灸)の重要穴。通常は刺鍼せず、温灸や塩灸で元気を補い、消化器系を調整する。任脈の腹部配穴の基準点として扱いやすい。
CV9 水分(すいぶん) 上腹部正中。臍(CV8)の真上。 水分代謝の調整穴。浮腫、腹水、下痢、腹鳴などに用いられる。小腸の機能調整にも関連。触診では腹直筋の正中(白線)を意識。
CV10 下脘(げかん) 上腹部正中。臍上で、CV12より下。 胃の下部に対応。消化不良、胃痛、食欲不振、嘔吐などに用いられる。中脘と併用されることが多い。触診では臍と剣状突起の間を上行しながら連続的に確認。
CV11 建里(けんり) 上腹部正中。CV10とCV12の間。 胃の機能調整。胃痛、胃もたれ、食欲不振、嘔吐などに用いられるが、中脘ほど頻用されない。
CV12 中脘(ちゅうかん) 上腹部正中。臍と剣状突起の間の上方寄り 胃の募穴で、消化器疾患の最重要穴。胃痛、胃炎、消化不良、食欲不振など幅広く使用される。腑会でもある。触診では剣状突起を触れて位置関係を固定すると迷いにくい。
CV13 上脘(じょうかん) 上腹部正中。CV12とCV14の間。 胃の上部に対応。胃痛、胸やけ、嘔吐、げっぷ、胃の膨満感などに用いられる。
CV14 巨闕(こけつ) 上腹部正中。剣状突起の直下 心の募穴。胸痛、動悸、不安感、胃痛、嘔吐などに用いられる。精神的ストレスに関連する症状にも有効。剣状突起は圧痛が出やすいので強圧を避ける。
CV15 鳩尾(きゅうび) みぞおち上部、剣状突起部近傍の正中。 任脈と陰維脈の交会穴。胸痛、心痛、胃の不快感、精神不安などに用いられる。絡穴としての機能もある。「鳩尾」は日常語として"みぞおち"全体を指すことがあるため、資料間比較ではCV番号で固定する。
CV16 中庭(ちゅうてい) 胸骨体下部の正中。CV15(剣状突起部)より上、CV17より下。 胸部の気の流れを調整。胸痛、胸やけ、嘔吐、咳などに用いられる。触診では胸骨の中央(正中)を保つ。
CV17 膻中(だんちゅう) 胸部正中。左右乳頭を結ぶ水平線の中央(胸骨上)。 心包の募穴で、気会。呼吸器・循環器系の最重要穴。胸痛、動悸、咳、喘息、乳腺炎などに頻用される。乳頭位置は個人差があるため、胸骨上の高さ関係でも再確認。
CV18 玉堂(ぎょくどう) 胸骨正中。CV17より上。 胸部の気の流れを調整。咳、喘息、胸痛、嘔吐などに用いられる。
CV19 紫宮(しきゅう) 胸骨正中。CV18より上。 胸部疾患。咳、喘息、胸痛、嘔吐などに用いられる。
CV20 華蓋(かがい) 胸骨上部(胸骨柄領域)正中。CV21より下方寄り。 呼吸器疾患。咳、喘息、胸痛、咽喉痛などに用いられる。
CV21 璇璣(せんき) 胸骨上部正中。天突(CV22)より下。 呼吸器・咽喉部疾患。咳、喘息、胸痛、咽喉痛などに用いられる。
CV22 天突(てんとつ) 頸部前面正中。**胸骨上窩(suprasternal notch)**の中央。 呼吸器疾患の重要穴。咳、喘息、咽喉痛、嗄声、しゃっくりなどに頻用される。陰維脈との交会穴。刺鍼は慎重に。触診では鎖骨内側端の間のくぼみを確実に捉える。
CV23 廉泉(れんせん) 頸部前面正中。舌骨の上方、オトガイ下(下顎下縁)との間。 任脈と陰維脈の交会穴。嚥下困難、構音障害、舌の疾患、咽喉痛、嗄声などに用いられる。唾液分泌にも関連。頸部は重要構造が多いため、圧迫は弱く、触診で同定優先。
CV24 承漿(しょうしょう) 顔面正中。下唇の下、**オトガイ唇溝(mentolabial sulcus)**の正中。 任脈と督脈の交会穴。顔面神経麻痺、歯痛、歯肉炎、口内炎、流涎などに用いられる。任脈の終点。

任脈の走行と特徴

任脈の主な機能

臨床的に重要な経穴