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1. 前根 Radices ventrales, ventrale Wurzeln
(図381(脊髄の横断模型図)、図398(孵化9日目のニワトリ胚の胸髄における前根細胞と後根細胞)、図400(脊髄の構造を模型的に表わした図)、図401(1つの感覚ニューロンの構造)、402(脊髄の一部における運動ニューロン群、感覚ニューロン、および索細胞の相互関係) )
(運動性の)前根線維Fila radicularia ventraliaは、同側の前柱にある大型の運動性細胞および同側の側柱細胞の神経突起である。したがって、運動性根の起始核は同側の前柱細胞および側柱細胞である。
2. 後根 Radices dorsales, dorsale Wurzeln
(図381(脊髄の横断模型図)、図398(孵化9日目のニワトリ胚の胸髄における前根細胞と後根細胞)、図400(脊髄の構造を模型的に表わした図)、図401(1つの感覚ニューロンの構造)、402(脊髄の一部における運動ニューロン群、感覚ニューロン、および索細胞の相互関係))
(知覚性の)後根線維Fila radicularia dorsaliaは、脊髄神経節の細胞の中枢側突起(求心性afferent、体知覚性somatosensibleの線維)および若干の後柱細胞が出す遠心性突起から成る(図399(脊髄神経節の構成およびその細胞の模型図:脊髄および交感神経幹との結合関係を示す) )。後者は脊髄副交感神経系に属している。後根の走行は前根のそれよりもはるかに複雑である。その線維群は互いに横方向に散らばる形でブルダッハ索に入り、全体として比較的小さい外側部とより大きい内側部とに分かれる(図381(脊髄の横断模型図) )。外側の線維群は後柱膠様質のすぐ後ろに並んで縦走するようになる。また最も外側にある線維群は辺縁帯を形成している。強い内側の線維群は軽く弓なりに曲がって内側に進み、その一部はブルダッハ索の様々な部分に入り、また一部は同側の後柱の灰白質に達し、あるいは(後交連を通って)対側に達している(図400(脊髄の構造を模型的に表わした図)、図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図)) )。
脊髄内に入った線維はそれぞれ2本の枝に分かれ、太い方の枝は上方に、細い方の枝は下方に向かって走る。上方に走る枝のうち、一部のみが延髄に達し、他は段階的に短い距離で終わる。これに応じて長い線維lange Fasern oder Bahnenと短い線維kurze Fasern oder Bahnenを区別する。下方に向かう枝はすべて短い。1つの根に属する線維は互いに密接して並んでおり、変性時には明確に境界された部分として見える。横断面ではコンマ形を呈し、シュルツェのコンマSchultzesches Komma(コンマ束Kommabündel)と呼ばれる。これらの枝からは、多数の細い側枝Kollateralenが直角に灰白質内に入る。上行および下行する両枝の末端は終末側枝terminale Kollateraleとなって灰白質内に入る。さらに、まだ分岐していない線維からも少数の側枝が出ることがあり、この側枝は灰白質内で終末分枝Telodendron, Endbäumchenとなって終わる。
終末分枝の末端は、この章の冒頭(291, 292頁)で述べたように、その興奮を様々な2次ニューロンに伝える。したがって、知覚性の1次ニューロンが達する領域は、その長さからみて極めて広範囲に及ぶ。
さらに明らかなのは、後索の全域がその大部分において後根線維の上行および下行する縦走枝から成っているということである。これに後索細胞からの線維がわずかに混入しているにすぎない。(C. II~Th. Vの高さの)ゴル索は延髄にまで達する長い線維のみを持ち、(Th. IV~C.1の高さの)ブルダッハ索は短い線維と長い線維の両方を持つ。
後根線維の終末分枝は脊髄の同側半の灰白質のほぼあらゆる箇所に散在している。知覚性側枝の一部は後交連を経て対側に行き、その後柱内で同側と同様に終わる。灰白柱の中央部では終末分枝が最も多く見られる。後柱が持つ多数の神経細胞は極めて細かい分枝系Astsystemによって密に包まれており、特にクラーク柱の細胞の周囲に終末分枝がよく発達している。
知覚性の側枝のうち、特に運動性の前柱細胞にまで達し、これに接して終末分枝を形成するものは特別な注意を要する。これはいわゆる反射側枝Reflexkollateralenである。知覚性の神経線維の興奮がこの側枝を通って直接に運動性の細胞に至り、脳にまで達することなく、この運動細胞から筋に伝えられる(図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図)) )。
生理学的にみると、前根は主として骨格筋の運動を支配する線維を含み、そのほかに血管運動線維および汗腺分泌を司る線維を持つ。後根は主として知覚性(圧覚、痛覚、冷覚、温覚、筋感覚)の線維を含み、さらに四肢に至る血管拡張線維を持つ。(Th. IIでの調査結果)後根および前根において、細い神経線維と太い神経線維の数が「ほぼ完全に」一致している(Schi-Hjau Hjlang, Acta anat., 11. Bd., 1950)。
[図401] 1つの感覚ニューロンの構造
[図402] 脊髄の一部における運動ニューロン群、感覚ニューロン、および索細胞の相互関係
矢印は興奮の伝達方向を示す(Kölliker による)。