乳管洞 Sinus lactiferi

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J0810 (後期妊娠中の右乳腺:乳房筋に対する位置で自由に調整された標本)

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J0811 (妊娠中の右乳房の水平断、上半分:下方からの図)

乳管洞(Lactiferous sinus)は、乳腺の末梢から乳頭に向かって走行する乳管(Lactiferous duct)が乳頭に入る直前に紡錘状に拡張した部分です。解剖学的には直径約5-7mmの管状構造で、乳頭の基部に位置しています(Geddes, 2007)。各乳管洞は対応する乳管小葉から集まった乳管と連結しており、通常一つの乳房には15-20個の乳管洞が存在します(Ramsay et al., 2005)。

組織学的特徴

組織学的には、乳管洞は二層の上皮細胞で裏打ちされており、内層は分泌上皮細胞、外層は筋上皮細胞で構成されています(Hassiotou and Geddes, 2013)。この筋上皮細胞は平滑筋様の性質を持ち、オキシトシンの刺激によって収縮することができます。周囲には疎性結合組織と豊富な毛細血管網が存在し、授乳期には特に発達します。

生理学的機能

臨床的意義としては、乳管洞は授乳時に重要な役割を果たします。射乳反射(milk ejection reflex)が起こると、下垂体後葉から分泌されるオキシトシンが血流を介して乳腺に到達し、筋上皮細胞を収縮させます(Kent et al., 2012)。これにより乳管洞内に貯留していた乳汁が圧出され、新生児の口腔内へと送り込まれます。この生理的メカニズムにより、催乳反射が持続する限り、新生児は連続的に母乳を摂取することが可能となります。

病理学的意義

また、乳管洞は乳管拡張症や乳管炎などの病理学的変化の好発部位でもあります(Dixon, 2006)。慢性的な乳管閉塞があると、乳管洞内に乳汁が貯留し、細菌感染を引き起こす可能性があります(乳管炎)。さらに、乳管洞内の細胞変化は乳頭分泌物の原因となることもあり、乳癌診断の際の細胞診検査の重要な対象部位となっています(Taffurelli et al., 2017)。

参考文献

東洋医学との関連性