骨半規管 Canales semicirculares

定義と解剖学的特徴

骨半規管は、側頭骨岩様部内の内耳迷路にある3本のC状の骨管で、それぞれが約0.8mmの直径を持ちます(Gray and Williams, 2000)。内部には内リンパ液で満たされた膜半規管が浮遊しており、両者の間には外リンパ液が存在します。これらは前半規管(superior)、後半規管(posterior)、外側半規管(lateral)から構成され、互いにほぼ直角(約90°)に配置されています(Standring, 2020)。各半規管は前庭に連なる膨大脚(ampullary limb)と単脚(simple limb)の2つの脚を持ち、膨大脚の基部には骨膨大部(ampulla ossea)と呼ばれる膨らみがあります。前半規管と後半規管の単脚は合流して共脚(crus commune)を形成するため、3つの半規管は前庭に5つの開口部で接続しています。

機能

機能的には、骨半規管は平衡感覚のうち特に角加速度(回転性運動)を検出するための重要な器官です(Purves et al., 2018)。膜半規管内の膨大部稜(crista ampullaris)にある有毛細胞が頭部の回転に伴う内リンパ液の動きを感知し、この情報が前庭神経を通じて脳に伝達されることで、身体の空間的位置と運動を認識します。

臨床的意義

骨半規管の障害は良性発作性頭位めまい症(BPPV)、メニエール病、前庭神経炎などの平衡障害をきたします(Bhattacharyya et al., 2017)。特にBPPVは後半規管内に耳石が迷入することで生じる回転性めまいで、Dix-Hallpikeテストなどの特殊な体位変換で診断され、Epleyなどの理学的治療法が効果的です。また、骨半規管の解剖学的位置関係から、外側半規管は中耳炎の合併症として瘻孔を形成することがあります(Santos et al., 2012)。内耳手術や人工内耳埋め込み手術では、骨半規管の正確な位置把握が手術成功の鍵となります(Karkas et al., 2018)。

参考文献

J1051.png

J1051 (前庭と半規管は、浸軟化された骨から外側に開く)